地上波テレビ放送を守る使命~中継局保守の過酷な現場

地上波テレビ放送を守る使命~中継局保守の過酷な現場

 台風15号の直撃で大きな被害を受けた千葉県。
 その千葉県内に、地上デジタルテレビ放送を各家庭に届けるため、放送波を出す中継局(鉄塔)が多数あることをご存知だろうか?
 一般的には東京スカイツリーから東京民放5社とNHKの放送波が出され、船橋タワー(船橋市三山)からチバテレの放送波が出され、そこから各家庭がその放送波を受信してテレビを見ている、あるいはケーブルテレビ等を通してテレビを見ているとのイメージがある。
 ただし千葉県は面積が広く、丘陵地帯もあるため、主に東部や南部地域には各放送局が合同で管理する、当該地域に放送を届けるための「中継局」が多数設置されている。

【停電の影響 広範囲に】
 今回の台風15号による停電の影響は、千葉県内に36か所ある中継局のうち、実に30局に及び、9月9日未明から非常用発電機用燃料で運用される中継局が出始めた。
 燃料が枯渇して放送波を止めないために、中継局に向かい燃料補給するという一刻を争う事態が発生した。

行く手を阻む倒木

【行く手を阻む倒木 過酷な登局】
 一般的に中継局は比較的標高の高いところに設置されている。このためどうしても山頂近くや山奥の小高い場所にあり、険しい山道、または道なき道を登っていくことになる。

ドラム缶に入った燃料を運搬

 また燃料は1つ約20kg。これを複数個背負い、ぬかるむ足元や滑る木の葉、折れた木の枝、倒木、さらにマムシやヒルなどの危険な生物にも警戒する必要がある。時刻は昼夜を問わない。とにかく一刻も早く現場に向かわないと、次々と放送波が途切れてしまう。

燃料を分配

 今回、チバテレと東京民放5社、NHK、保守事業者等のグループは、緊急事態の発生直後から一致団結し、倒木の処理依頼なども素早く対応できた結果、9月13日午後3時過ぎには、全ての中継局で電源が復旧された。
 ただし、まだ仮復旧中の場所もあり、依然として予断を許さない状況は続いた。

 チバテレ報道制作局技術部長の大場一郎は、「東日本大震災発生時の困難な燃料調達、そして数年前の雪害被害を踏まえ、各社間の緊密な連携及び行政との情報共有をスムーズに実行できたため、複数の中継局への早期登局が可能になった。これまでの経験を生かした中継局復旧ができた」と胸を張る。
 ただし、「今回も改善すべきことは多い」として気を緩める気配はない。
 放送を続けていくために過酷な状況の下でも行動し続ける、こうした人物たちの熱い気持ちが、きょうも各家庭に安定したテレビ放送を送り届けている。

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