事件から16年 コロナ禍の中、命の尊さどう伝えるか 根っこは同じ「命を守る」 教師ら伝え方に腐心

下校時に児童らと話す川原教諭=佐世保市、大久保小

 佐世保市の小6女児同級生殺害事件は1日、発生から16年を迎えた。新型コロナウイルスの影響で、市教委は、毎年6月に実施する「いのちを見つめる強調月間」を9~11月に延期。コロナ禍の中、命の尊さを子どもたちにどう伝えるか。教師たちも腐心している。
 5月下旬の朝8時すぎ。市立大久保小で6年生の担任を務める川原学教諭(41)が児童から、各家庭での検温結果を記した紙を回収した。学校再開後の新しい日課。全員の無事を知りホッとする瞬間だ。「学校に来てくれるだけで100点なんですよ」と川原教諭。
 新型コロナで学校生活は大きく変わった。授業中も給食の時間も児童は私語は原則禁止。例年なら運動会に向け、体育の授業でリレーやソーラン節の練習をしている時期だが、接触を避けるため走り高跳びに変更になった。グループワークでの授業も少なくなっているという。
 子ども同士の触れ合いを制限する生活がいつまで続くのか、それが子どもたちの心にどういった影響を及ぼすのかは未知数。「一日でも早く元の学校生活に戻してあげたいが、子どもたちの健康も守らなければならないし…」。川原教諭は複雑な心境を語る。
 新型コロナ対策として、市教委は「強調月間」を9~11月に延期。1日の大久保小の集会も規模を縮小した。コロナ禍は、事件とはまた違った命の教育の重みを現場に突き付けている。西本眞也教育長は「子どもたちを感染症から守る対策を講じる中で、『命を守る』ことは何物にも代え難いという重みをあらためて感じている」とのコメントを出した。
 川原教諭も思いは同じ。「一人一人の心掛けが、多くの命の守ることにつながる。先が見えない状況だからこそ、子どもたちには他人を大切にする心を持ち続けてもらいたい。根っこでは『いのちを見つめる教育』と同じだと思う」
 夕方の下校時間。「明日も元気に登校してください」。川原教諭はそう言って児童たちを見送った。

 


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