長崎大に知事が感謝 クルーズ船集団感染で医療支援 河野学長「一致協力の成果」

中村知事(手前)にクルーズ船の医療支援について語る河野学長(中央)ら=長崎市文教町、長崎大

 新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船コスタ・アトランチカの出港を受け、中村法道知事は1日、長崎大の河野茂学長を訪ね、医療支援へのお礼を述べた。河野学長は「県と大学が一致協力してやり遂げた成果」と総括。同席した医師らは報道陣の取材に、集団感染確認後の緊迫した状況などを語った。
 長崎大は4月20日に感染者が確認されて以降、検査や医療支援、健康観察などに当たった。149人の感染が確認されたが、死者は出ず、同船は5月31日にフィリピンに向け出港した。
 中村知事が「朝夕のミーティングごとに適正なご指導をいただき、きょうを迎えることができた」と感謝を伝えると、河野学長は「感染症の臨床エキスパート全ての力を結集した。県民の安心のため感染症対策をしっかりやっていくいいきっかけになった」と応じた。
 知事との面会後、同大熱帯医学研究所の森田公一所長は取材に「県、市、大学の連携が初動からうまくいった。死者を出さずに出港できて良かった」と安堵(あんど)した。長崎大学病院感染制御教育センター長の泉川公一教授は「最初の1週間は混乱があった」と打ち明け、20人程度と見積もった重症者受け入れは、他県も余裕がなく、県内の病床が埋まれば長崎市内の病床を増やすことも検討したという。
 泉川教授はまた600人超の健康管理の難しさを痛感したという。当初は夕方に病状を把握し、入院は夜間の対応となり「現場はものすごく大変だった」。乗組員が毎朝、体温などを入力するアプリを同研究所などが開発後、午前6時には乗組員の約8割の情報が入手可能となり、ITの有効性を実感。客船の集団感染については「教訓をもたらした」とし、メンタルケアも含め受け入れ態勢を構築すべきと述べた。

 


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