「LISTENERS リスナーズ」安藤裕章(監督) - 一緒に世界を生み出してくれた人々に感謝

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自身の力量が見合うのか尻込みするところはありました

――『LISTENERSリスナーズ』に参加された経緯を伺えますか。

安藤:本格的に企画を動かそうと言うところで、佐藤大さんと橋本太知さんに声をかけて頂きました。じんさんの『メカクシティアクターズ』も見ていましたし、pomodorosaさんの絵で提示された世界観も惹かれました。

――最後に参加されたんですね。お声掛けされた際の率直なお気持ちを伺えますか。

安藤:映画やアニメの好みを問われたら一番は音楽が絡むモノです。しかし好きなジャンル故に自身の力量が見合うのか尻込みするところはありました。それにアニメの制作はチーム力なので、この企画に見合う制作チームを組めないと良い結果にはならないと、参加にあたって一緒に作ってくれる制作会社の希望を出しました。そこで信頼するMAPPAの大塚学社長にお願いする形になりました。

――今作は「ボーイ・ミーツ・ガール」作品となっていますが、監督が考えている「ボーイ・ミーツ・ガール」の魅力とはなんですか。

安藤:「ボーイ・ミーツ・ガール」は他との出会い、異との出会い。「リスナーズ」はロックのワンダーランドが舞台ですが、憧れる何かに出会い、それとの関わり合いを求め旅立つ物語で、本筋はとても普遍的。誰もが思い当たるところがあることが王道の魅力だと思います。そこを生かすことが出来ればと意識しました。

――各話それぞれに街のデザインも特徴的で見ていて二人と一緒に旅をしているようで楽しいです。

安藤:作品世界のデザインは、そのジャンルの楽曲から、アートワークから、カルチャーからと、想起される全てのイメージからです。話数ごとにロックジャンルの国々を巡るので…とにかく詰め込んでます。各ジャンルにスタープレイヤーがいて、専用のイクイップメントがあって。ジャンルの文化が違えば、建物も違うし住人も違う。量的にはけっこう無茶をしました。正しくは苦労をかけさせてしまったのですが… 一緒にリスナーズの世界を生み出してくれたすべての方々に感謝してます。

掛け合いのセッション

――それだけ皆さんでコダワリをもって制作していただけて嬉しいです。デザインにも多くの音楽ネタが盛り込まれていて、そちらを追いかけるのも大変でしたが楽しいです。

安藤:皆が音楽好きで、好きなことを語った結果でしょうか。企画脚本打ちは楽しかったです。有意義な脱線が多くて、すぐ時間がたち終電で止む無く解散というのが毎回でした。

――同じ趣味・思いを持ってぶつけ合うことが出来るのは素晴らしいことだと思います。実制作にあたっては現場のスタッフにも世界観を伝えなければいけないと思います。その部分は監督が担っていらっしゃると思いますがどのように共有されたのですか。

安藤:音楽の神に助けて貰ったと感じています。物語の中で題材にするジャンルが決まれば、その楽曲に、その楽曲を取り巻く文化に世界観の共有を助けて貰えました。絵も音も作られていく中で、それぞれのパートの皆が色々盛り込んでくれました。

――デザインもそう出すが作品内で使われる用語も音楽用語とリンクされています。どのように作品世界とリンクされていったのか伺いたいです。

安藤:企画脚本打ちで皆さんが語る音楽ネタは「エモさ」や「好き」に溢れてました。その「エモさ」を物語の「エモさ」に合わせることで、自然と作品世界に合ってリンクしたのかなと思います。

――とはいえこれだけ豊富な音楽ネタ、物語とのバランスを取るのは大変ではありませんでしたか。

安藤:企画チームの皆が音楽の本職であったり音楽に関わる仕事をされていますが、同時に皆が物語に関わる仕事をされている方々です。まずは物語あってのことというのは言うに及ばず共通認識だったと思います。

――改めて、各キャラクターのデザインについても伺えますか

安藤:キャラクター作りやデザインはpomodorosaさん、寺尾洋之さんが企画脚本打ちにずっと付き合ってくれたのが力強かったです。打ち合わせ内容を聞きながらその場で絵のアイデアを出してくれて、物語もそれに影響をされる。掛け合いのセッションです。

――確かにこれだけお互いにぶつかり合って制作するのはセッションですね。そうやってセッションされていく中で印象に残っていることがあれば伺えますか。

安藤:脚本構成で当てたそれぞれのジャンルに、上手く世界観作りを牽引して貰えたと思います。絵と音が重なって映像として完成していくにつれ、具現化される多彩なジャンルの世界にゾクゾクしました。

――キャストのみなさんはどのように決められたのですか。

安藤:主人公の二人はオーディションです。参加していただいた方々、皆さん上手なんですよね。その中からの選出は、素で持つ声の印象がキャライメージに合うかどうかで話し合いました。そして主人公が村瀬歩さん高橋李依さんに決まると、キャラクター像のフワッとしていた部分が明確になり、プレスコであることも相まってキャラ作り芝居作りに影響を受けます。ここもセッションなんです。二人以外のキャラは「僕の考える最強のキャストリスト」的なものを企画メンバーの皆で持ち寄ったのですが、その内容がそのまま通ってしまいました。

掛け合わせてたハーモニーを感じて欲しい

――実際に役者巧者な皆さんが集まっているので頼もしい限りですね。現場ではキャストにはどのように演技指導をされたのですか。キャラのバックボーンやモデルの元ネタも伝えてられたのでしょうか。

安藤:私から説明したのは物語上でのキャラの状況や場面の状況の説明です。キャラの人物像を伝えるのはpomodorosaさん、鎌田晋平さんのキャラ絵に助けてもらってます。キャストの方々は皆、役に対しての取り組みが真摯で、担当された役そのものになって考えてくれます。村瀬歩さん高橋李依さんは質問も鋭く、受け答えている中でよりキャラクター像が固まっていく部分もありました。

――音繋がりという事で今作の劇伴のこだわりについても伺えますか。アーティスト・用語含めて音楽を物語の主軸に居れている作品だからこそなお強いのではと感じています。

安藤:このような作品ですから、脚本打ちの時点からこの場面ではこんな曲をというのは話し合っていました。楽曲のスタイルに関しては、じんさんやL!th!umさんにお任せして、こだわってもらってます。劇伴曲展開と映像展開のシンクロは特に楽しんでもらいたいところです。音響監督の小泉紀介さんが、「エモく」仕上げてくれています。

――みなさんにも伺っているのですが、設定資料集は出そうですか?これだけコダワリのある作品なので欲しいです。

安藤:本編では出すことのできなかった部分や、少ししか見せることのできなかった部分も多くあります。是非お見せしたいです。

――沢山お話を伺ってきましたが、改めてここに注目してほしいというコダワリがあれば教えてください。

安藤:演出も、作画も、ロボアクションCGも、美術も、色も、コンポジットも、編集も、担当してくれた方々、話していると皆音楽好きです。皆に無理をかけましたが、皆が好きにこだわってくれました。それぞれで盛り込んでくれた部分も多く、掛け合わせてたハーモニーを感じて欲しいです。

――最大の謎でもある『ミミナシ』とは何でしょう。話せる範囲で大丈夫なので是非教えてください。

安藤:抽象的な言い方になりますが二項対立の他者でしょうか。でも善とか悪ではないです。その先は物語で見てください。

――他にもまだまだ謎の多い物語でこれからの展開が楽しみです。話せる範囲でこれからの物語を。

安藤:物語は折り返しを越えて急展開。エコヲとミュウがどうなるか…もう見守って貰うしか無いです。

――安藤監督にとっての「決して忘れられない「音」」はありますか。個人的なものでも大丈夫です。

安藤:高校の1級上の先輩が学校漫研で無謀にもセルアニメを作っていました。ロボアニメで、キャストの声が入って、劇伴が入って、SEが入ってる。それを見た日、世界は変わりました。TVで見るそのままに自分たちでも作って良いのだと。早々にその制作に加わって、今の自分に至ります。映像において絵と音は両輪、世界が変わるまでに心を揺り動かされた、私の忘れられない「音」の一つはそのアニメの中の音です。

――最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

安藤:エコヲとミュウを自分のことのように見て貰えたらと思ってます。人は一人では変われないし、旅立てない。旅の結果に二人は何を見いだすのか。一緒に見いだしてくれたら嬉しいです。