5カ月で昨年1年にほぼ並ぶ、上場企業「早期・希望退職」 すでに33社が募集

 2020年1-5月に早期・希望退職者を募集した上場企業は33社(延べ34社)(前年同期17社)に達した。前年同期の2倍増のペースで、2019年の年間35社(延べ36社)に、ほぼ並んだ。1-5月までに30社を超えたのは、2013年(36件)以来、7年ぶり。
 年初は、小売や食料関連を中心に、将来の市場縮小を見越した“先行型”の実施が目立った。だが、その後は新型コロナウイルスによる業績悪化で、いち早く募集を行う企業や赤字企業の実施が増えた。
 感染拡大の影響で、業績の下方修正を開示した上場企業は5月27日時点で783社(東京商工リサーチ調べ)にのぼり、ほぼすべての業種に広がっている。
 3月期決算が出揃ったが、“黒字リストラ”の業績堅調な企業の人員削減以上に、業績不振による従来型の“赤字リストラ”による退職者募集が増えてきた。2020年4月の有効求人倍率も1.32倍(季節調整値)と、前年同月から0.31ポイント低下し、雇用環境のさらなる悪化は避けられない状況だ。

  • ※本調査は、希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を対象に抽出した。
    実施が翌年以降の企業は除く。原則、『会社情報に関する適時開示資料』(2020年5月31日公表分まで)に基づく。

業種別 繊維製品が5社でトップ 消費の減退も影響

 33社の業種別は、消費増税、暖冬、新型コロナと三重苦の経営を強いられる繊維製品が5社で最多。百貨店に販路を持つオンワードホールディングス、レナウン(5月民事再生)のほか、片倉工業、オーミケンシ、東海染工も製造拠点の相次ぐ事業規模縮小に伴い、退職者を募る。
 “新しい生活様式”による外出自粛で、今夏にかけて消費者の衣料購入は低調に推移するとみられ、アパレル関連の先行きは不透明感が強い。他の業種では、輸送用機器4社、電気機器、精密機器、サービス各3社と、海外需要の低迷に引きずられる形での実施が目立つ。

実施企業の約半数が赤字、新型コロナを要因とした募集は5月末までに5社

 2019年は黒字企業の募集が目立ったが、今年に入り、従来型の赤字企業のリストラが急増している。19年5月末までに募集実施した17社のうち、直近決算の赤字は5社と3分の1以下にとどまっていた。だが、20年同期は33社のうち、15社(構成比45.4%)が赤字を計上している。上場企業の業績は20年に入り、悪化しており、東京商工リサーチの調査では5月29日時点で3月期決算を発表した2,314社のうち、863社(同37.2%)が減収減益で、増収増益685社(同29.6%)を上回る。このため、今後も赤字や減収減益の業績不振の企業を中心に、退職者の募集は増勢をたどるとみられる。
  新型コロナウイルスの影響で早期・希望退職募集を開示した企業は、合計5社。ラオックス、HANATOUR JAPAN、ベルトラの3社はインバウンド消失型。このほか、自社製品の需要減が見込まれる岡本硝子と、広告出稿の減少が影響したぱどの2社が募集を実施した。新型コロナウイルスの影響で、応募の申請期間を延期した企業は、サッポロホールディングスが3~4月の募集開始を5月に延期、芝浦機械(旧商号:東芝機械)も募集終了を当初の4月から6月に延ばした。

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