【達人に聞く!次に旅するならココでしょ】Vol.3 韓国 レトロな風情と人情を味わうディープな“シュポ飲み”のすすめ

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緊急事態宣言は解除されたものの、海外旅行再開の目処が未だ立たない中、旅への欲求を高め、次の旅を妄想する期間に充てたい方にお届けするシリーズ企画【達人に聞く!次に旅するならココでしょ】、略して「ツギタビ」!!

第3弾は、日本からのフライト時間も短く、グルメにショッピングに人気の韓国の一歩踏み込んだディープな楽しみ方を紹介する。

▶第1弾「台湾編」
▶第2弾「イタリア編」

韓国の紀行本を多く執筆し、ソウルの下町在住の紀行作家である鄭銀淑(チョン・ウンスク)さんに、失われゆくレトロな佇まいと人情が楽しめると韓国通の間で話題の“シュポ飲み”について教えてもらった。

シュポは日本でいうスーパー(マーケット)の略語。日本にも酒屋さんの店先で飲むスタイル(角打ち)があるように、韓国では個人経営の小さなコンビニともいえるシュポで気軽に飲める店が存在するという。

シュポ飲みはまさに韓国版“せんべろ” (千円でベロベロに酔える価格帯)!一度ハマったらクセになる、シュポ飲みの魅力とは!?

昔ながらの物語を感じさせる場所で

<達人・鄭銀淑さんインタビュー>

――韓国全土を旅し、韓国の大衆グルメや散歩にまつわる本を数多く執筆されている鄭さんですが、近著「美味しい韓国 ほろ酔い紀行」はどのような本でしょうか?

私は自分の親世代の物語を感じるような、昔ながらの風景が残っている場所が好きで、これまでそういった場所や韓国の飲食店を紹介してきましたが、この本では普通のガイドブックには載っていない、韓国で最も大衆的な雰囲気を味わえる「シュポ」と呼ばれる場所をたくさん紹介しています。

(左)「美味しい韓国 ほろ酔い紀行」表紙( 鄭銀淑 著/双葉社)(右)巻末の「私が選んだ韓国の大衆文化遺産100」と題したチェックシート ©️tabilista/futabasha  

巻末には「私が選んだ韓国の大衆文化遺産100」と題したチェックシートがあり、これまで20年ほど韓国中を歩き回って選んだ「見るべき・食べる(飲む)べき・体験すべき」 100 項目を紹介しています。

ソウル市内だけではなく地方に残る大衆文化遺産スポットも入れているので、楽しんでもらえると思います。私の本を読んで韓国を巡ってくれている方の、モチベーションアップにもつながるとうれしいです。

安くて郷愁と人情を味わえる“シュポ飲み”の魅力

――「シュポ」の特徴、魅力を教えてください。

そもそもなぜ小売店であるシュポで飲めるようになったかというと、タバコやコーヒーなどを買っていた常連客が仕事終わりに自然とお酒を買って飲むようになり、店が常連のために座って飲める席を用意し、簡単なつまみを作って出すようになった。それが常態化したんです。

日本の角打ちは立ち飲みが基本ですが、韓国のシュポにはテーブルがあるのが普通です。

鄭さん(左) お気に入りのシュポ、ソウルの「鍾路3街」にある「ヨングァン食品」。 常連が持ち込んだ豚肉でサムギョプサルを焼き、ご相伴にあずかったこともあるという

シュポ飲みの魅力は3つあります。

__1\.「安い」
2.「現地にとけ込める」
3.「主人や常連客とふれあえる」__

まずは何と言っても安く飲めます。首都のソウル市内では、ちゃんとした飲食店だとビール1本が4000ウォン、ソジュ(焼酎)1本が4000ウォン、 マッコリが3000~4000ウォンくらいしますが、シュポではそれより1000~1500ウォン安く飲めます。
(1ウォン=約0.8円)

つまみは調理されたものを頼んでも良いし、シュポで売られているポテトチップスやえびせんなどの袋菓子や缶詰を買って食べても良い。そのあたりは日本の角打ちと同じです。日本でいう“せんべろ”みたいに、1人10000ウォンもあれば十分に楽しめます。

「乙支路4街」にある「トンイル食品」のSPAM焼き。店内で売っているスナック類や缶詰をツマミに飲めるのが魅力。主人に頼むとスパムのスライス焼きや、卵焼きといった簡単な料理を出してくれる

次に、「現地にとけ込める」気分に浸れること。シュポは基本的に周辺で働いている人や住民が利用する場所で、観光地ではありません。

しかし、ここ数年はレトロモダンなものや生活感のあるものに関心をもつ人が増え、昔の韓国の雰囲気を楽しむために 70年代80年代の風景が残るシュポに飲みに来る外部の人も増えてきました。

シュポが多く存在するソウル市内の「鍾路3街」や「乙支路4街」には、零細工場街が残っていますが、都心なので何年か後には再開発で撤去される可能性が高く、今のうちにその姿を目に焼き付けておこうという人が多く訪れています。

「乙支路4街」の「トンイル食品」の店先。その店のある場所だけ切り取ると時代が分からなくなってしまうような不思議な雰囲気を醸し出す

そして、「主人や常連客とふれあえる」こと、これが最大の魅力です。主人も常連客も気さくな人が多く、店内も狭いので必然的に客同士でふれあう機会が多くなります。

私は元々、主人が一人でやっているような小さいお店が好きなんですが、昔の風景を残す路地にあって、人情や人の生活の匂いが残っているシュポで飲むことにすっかりハマってしまいました。

「鍾路3街」にある「ソウル食品」の1階にて。日本からいらした読者さんと鄭さん(左)

――韓国語が分からなくても行って大丈夫でしょうか?

日本の人は韓国語ができないと旅行を楽しめないと思っている人が多いように思いますが、実際はそんなことはありませんよ。日本と韓国はお隣同士ですし、メンタリティも似ています。お酒の席だったらなおのこと、コミュニケーションに言葉は重要ではありません。

店が狭いので隣のお客さんから自然に話かけたりします。私もシュポに行くと必ず隣で飲んでいるおじさんに話しかけられます(笑)。私の本を読んでシュポに行った人も、隣のおじさんと仲良くなっておごってもらったという人もいたり、「今までになかった経験ができた」と好評です。

――シュポ飲みの楽しみ方、コツを教えてください。

お酒が飲めるシュポは特に市場の近くや零細工場の密集地に存在しています。ソウルだと「漢江」という大河の北側にある「乙支路4街」や「鍾路3街」「忠武路」といった場所に集まっています。

特に「乙支路4街」が見つけやすいです。どこも昼間から営業していますし、歩いて回れる範囲なので何軒かはしごするのもおすすめです。

韓国の人は路上飲みが大好き!「鍾路3街」の「ソウル食品」の店先の様子

もちろんシュポはスーパーなので、ソウル市内だけでなく地方にもあります。お酒が飲めるシュポかどうかの見分け方ですが、店の中にテーブルがいくつかあれば、飲める店と判断していいでしょう。

「芽項」という田舎町のシュポで地元の人たちと飲んでいたら、その中のおじさんが、「ウチは民宿をやっているから、泊まっていくといい」と言ってくれたので、カメラマンと2人でお世話になったことがありました。

朝になったら、おじさんがラーメンの材料とカニを持って来てくれたので、一緒に煮て美味しくいただきました。お金を渡そうしたけれど受け取ってくれないので、部屋にこっそりお金を置いておいた、なんてこともありました。

そういう人情を感じる出会いがあるところも魅力です。

――初心者でも楽しめるシュポはありますか?また、シュポでのルールについて教えてください。

初心者には乙支路4街の「大福マートゥ」や鍾路3街の「ヨングァン食品」がおすすめです。1人でも「アニョハセヨ(こんにちは)」と言って入って行けば、よほど混んでいない限り、飲ませてもらえるでしょう。

「 乙支路4街」の「大福マートゥ」 外から店内の様子が見えるので初心者にも安心だ

「アニョハセヨ」「マシッソヨ(おいしい)」「コマッスミダ(ありがとう)」の3つだけ丸暗記しておけば、店の主人や隣席の人とすぐに仲良くなれると思います。言葉の心配はしなくて大丈夫です。むしろあまり上手ではないほうが友達になりやすいのではないでしょうか。

メニュー表がないところがほとんどなので、何をオーダーしたら良いか迷ったら、隣の席で食べてる人の料理をじっと見て「マシッケッタ(おいしそう)」と言えば、韓国の人はほっとかないので世話を焼いてくれます(笑)。

缶詰を調理した料理も魅力。「鍾路3街」の「ソウル食品」のサンマの缶詰を豆腐やネギとともに煮たコンチチゲ ©️tabilista/futabasha

気をつけて欲しい点としては、小規模なお店ということもありできるだけ現金での支払いのほうがお店も助かります。そしてシュポは薄利多売の地味な商売なので、たくさん飲んでたくさん食べてもらいたいです。一般の飲食店と比べかなり安いので心配いりません(笑)。

都市から田舎町へ、人の匂いを求めて

―― 鄭さんが暮らすソウルの様子は今いかがですか?また、コロナが収束したら行きたい“ツギタビ”を教えてください。

韓国では感染防止に気をつけながら生活するという、普段の生活が段々と戻りつつある状態です。国からの緊急災害支援金が支給されたこともあり、地域の経済を活性化すべく、外で飲んだり食べたりしている人が増えました。(5月23日時点)

2002年のワールドカップやヨン様ブーム以降、私は洗練されたソウルより、韓国らしさが色濃く残っている地方の町の取材に力を入れて来ましたが、2016年頃からは再びソウル回帰をして、都市の中の人の匂いがする場所を探してきました。

なので、これからはもう一度地方に目を向け、昔からの風景が残っている開発が及ばない田舎町を歩きたいです。あと、マッコリが好きなので蔵元を巡って飲みながら取材するのもいいですね(笑)。

特に船の旅が好きなので、全羅道(チョルラド)の西側や、済州周辺の離島に行ってみたいです。

【プロフィール】 鄭銀淑チョン・ウンスク
韓国の江原道楊口生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に語学留学。現在はソウルで執筆・翻訳・取材コーディネートを行なう。テウォン大学・講師。「韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅」「港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂」「馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人」(双葉社)、「韓国酒場紀行」「マッコルリの旅」「韓国『県民性』の旅」など著書多数。NHK『世界入りにくい居酒屋 釜山編』取材コーディネート担当。
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さらに、韓国旅の魅力を掘り下げるべく、ワンテーマにこだわる旅のWEBマガジン「TABILISTA」で鄭さんが連載中の「韓国の旅と酒場とグルメ横丁」から、絶品大衆グルメをピックアップして紹介する。

【ソウル、すぐに見つかる美味しい駅前食堂】

「鍾路3街駅」6番出口にあり、常時行列ができる豚ハラミ焼肉の「味カルメギサル専門」では看板商品のカルメギサルをご主人が小さく切り分けてくれる ©️tabilista/futabasha
「乙支路3街」駅5番出口にある「乙支麺屋」はクラシックな平壌冷麺の老舗 。こちらは看板商品のムルネンミョン ©️tabilista/futabasha

ソウルで美味しいものを食べたいときの参考になる、ソウル中心部の駅前・駅近グルメ。アクセスも良く地元の人からも愛されている美味しい店を、看板メニューや店の情報と合わせて紹介。

【韓国大衆酒場〈地方編〉 】

「釜山」の国際市場の北のはずれにある小さな居酒屋「居昌チプ」では35000ウォンで酒3本頼めばつまみがずらりと並ぶ ©️tabilista/futabasha
「群山」の「紅チプ」は韓国を代表する“せんべろ”酒場。2本分のマッコリが入ったやかんに、海産物を中心としたつまみが10皿近く添えられて10000ウォンほど ©️tabilista/futabasha

デポチプ(大衆的なマッコリ酒場)や酒幕と呼ばれる昔ながらの酒場は、首都ソウルよりも変化のスピードが遅い地方の町に多く残っている。女将のキャラクター、地元密着度、常連客の熱、そして何よりも安い!という観点で鄭さんが厳選した酒場を紹介。

紹介した旅以外にも興味深いテーマに沿った、韓国に密着した情報が盛りだくさんな連載コラム「韓国の旅と酒場とグルメ横丁」は、双葉社が運営する旅の達人たちによる本物志向の旅サイトTABILISTAで楽しめる。