県民の宿泊に5000円補助 観光事業者支援で県が追加補正案

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新型コロナウィルス感染症対策で警戒度が3から2に引き下げられ、伊香保の石段街に訪れた観光客=5月31日掲載
座席の間隔を空け、出演者もマスクをするなど対策をして再開した湯もみショー=5月23日掲載

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦境にある観光事業者を支援するため、群馬県は2日、県内宿泊施設を利用した県民に1泊5000円を補助するキャンペーンを始めることを明らかにした。開会中の県議会第2回定例会に、関連事業費12億5300万円を増額する本年度一般会計補正予算案を追加提案した。4日に開かれる本会議での議決を経て、5日~7月31日の宿泊分を補助する。県内観光3団体が作成した感染予防のガイドライン(指針)を順守し、事務局に登録したホテルや旅館が対象となる。

◎事業支援・感染予防対策・県内消費促進 県外客を前に準備

 首都圏からの集客が難しい中で観光業を盛り上げ、県民に県内観光地の魅力を再発見してもらう。早ければ7月に開始される政府の「GoToキャンペーン」(観光・飲食業支援)に向け、宿泊施設の感染予防対策を徹底する狙いもある。

 愛郷ぐんまプロジェクト「泊まって!応援キャンペーン」と銘打ち、宿泊費6000円以上の場合に適用。補助のうち県が4000円、施設が1000円を負担する。3連泊まで利用でき、回数制限は設けない。利用枠は延べ30万人で、財源には地方創生臨時交付金を充てる。

 ビジネスホテルや民宿も含むホテル、旅館(風営法で規定される施設は除外)が、ググっとぐんま公式ホームページ(HP)を通じて参加を登録。利用客は宿泊の際にキャンペーンの利用を申し出て、住所が確認できる証明書を見せて書類に記入する。対象施設はHPで公表する。

 2日の県議会一般質問で井下泰伸氏(自民)の質問に、山本一太知事は「1都3県からの観光は7月末まで一定程度抑制される。まずは県内から盛り上げることが重要」と意義を強調した。

 県の4月23日までのまとめでは、県内宿泊施設で3~6月に少なくとも延べ約38万5000人のキャンセルが発生し、損害額は約40億2000万円に上る。県旅館ホテル生活衛生同業組合は「先が見えず困惑する事業者が多かったが、これで前向きな気持ちになれる」と期待しつつ、「県民に安心して訪れてもらえるよう、予防対策に万全を期したい」としている。

 群馬経済研究所は「県民のみが補助対象になることで、安心して宿泊できる効果もあるのではないか。迷っていた消費者の背中を押す効果がある」と指摘した。

◎「回復の契機に」 期待感も県民限定で効果見通せず

 新型コロナウイルス対策で、県民が県内の宿泊施設に泊まった場合に1泊5000円を補助する県の施策が明らかになった2日、旅館やホテル事業者に、宿泊需要が喚起されることへの期待感が広がった。寝具のクリーニングや食材卸などの関連業界も支援策を歓迎する。ただ、旅行者の8割は首都圏から来ているとの調査結果もあり、実際にどの程度の効果が望めるのかは見通せない。

 「温泉街ににぎわいが戻るきっかけになってほしい」。草津温泉の湯畑近くの旅館代表者(67)は支援策を歓迎する。業界団体のガイドラインに沿った感染予防策を講じて1日に営業を再開。「まずは県内のお客さまのために尽くしたい」と意気込む。

 シティーホテルの太田ナウリゾートホテル(太田市)は「すごい話。とてもありがたい」と喜んだ。割引される宿泊と合わせ、暑気払い向けの宴会プランを企画し、市内の企業を中心に提案していく。

 伊香保温泉の旅館やホテルに食肉を卸すレーベン(吉岡町)は、5月の受注がほぼゼロだった。「少しでも需要が回復してくれれば」と期待する。温泉地の宿泊施設を主な取引先とする中之条町の寝具クリーニング業者は「前年比で8割以上も仕事が減っている中で明るい材料」と受け止める。ただ、割引は一時的な政策で「長期的なことを考えると不安は拭えない」と話す。

 感染への不安も根強い。みなかみ町で民宿を営む男性(43)は施策を歓迎しつつも「予防策も手探りの中、感染源になったらどうしよう」と懸念する。客室の稼働を減らし、入浴や食事の時間をずらすなどして5月の大型連休明けから営業を再開した。例年はラフティングや山登りの観光客が多いが今年は開店休業状態。「生活自体が大変な人がいる中、どれだけの人がレジャーで来てくれるか」と不安をにじませる。

 県が2年前に行ったアンケートで、県内の観光地を訪れた人の8割が東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県から来ていた。県は県境をまたぐ観光は19日から徐々に再開させる方針で、宿泊需要が本格的に回復するのは同日以降になる可能性が高い。県外客が多い伊香保温泉の旅館は「施策はありがたいが、果たしてどこまで効果が出るのか」と声を潜めた。

◎各市町村も独自の支援策を実施

 新型コロナウイルスの影響下での観光需要の喚起を狙い、県内の市町村も独自の施策に取り組む。

 渋川市は感染予防対策の独自基準を達成するなどした市内宿泊施設を対象に、利用した市民に半額(上限5000円)を助成する制度を設けた。10日~7月31日の利用が対象で、先着1000人分の予算500万円を確保した。利用者には会員制交流サイト(SNS)などで魅力を発信してもらい、感染予防の取り組みについてのアンケートに答えてもらう。

 嬬恋村も村内に泊まった観光客の宿泊費を割り引く制度を計画する。事業費を1000万円とし、具体的な内容を検討中。県外からの観光客も対象とする方向で、情勢を踏まえて実施時期を決める。草津町は、大型観光企画「群馬デスティネーションキャンペーン」の宣伝費として観光団体に割り当てた計2000万円の予算を、新型コロナからの復旧対策に振り替え、PRなどに役立ててもらう計画。沼田市は県の補助制度を利用した人を対象に、真田氏関連のグッズを贈ることを検討している。