スポーツ界の「民意」

 人民の意志、一般の人々の考えを意味する「民意」には、時に政治を動かす力がある。今国会での検察庁法改正案の成立見送りは、野党や検察OBらの反対だけではなく、著名人の抗議の投稿も相次いだ「ツイッターデモ」が影響したと言ってもいいだろう▲新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年は夏のインターハイや甲子園をはじめ、あらゆるスポーツ大会が中止となった。もちろん、最優先されるのは命。主催者側が繰り返した「苦渋の決断」という言葉も納得できる▲ただ、ここで見逃したくないことが一つ。中止決定の際、そこにスポーツ界の現場の「民意」はどれだけ反映されたのかと▲「まだ何カ月も先なのに」「判断の先送りはできなかったのか」という声が大きくなったのは、中止の決定後。甲子園の中止が決まった日、大阪府の吉村洋文知事も「僕自身はやってほしかった。高野連はリスクをとるべきではないか。何とか実現できなかったのか」と述べたが、結論は動かなかった▲止まらないスポーツ界への逆風は今後、10月の国体、冬の駅伝やサッカー、ラグビーなどの全国大会へと進路を移すだろう。この状況を現場の大人たちがどう受け止め、どう行動するか▲民意は示さなければ届かない。座して待つだけでは、流れは変わらない。(城)

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