新型コロナウイルスの感染拡大で経済的に困窮したり自宅に親子でいる時間が増えたりして、虐待リスクが高まることが懸念されている。対応に当たる長崎こども・女性・障害者支援センター(児相)の加来洋一所長に、現状や今後の見通しを聞いた。
-児童虐待の対応件数、事案内容に変化はあるか。
肌感覚として件数は増えている。ただ児童虐待の対応件数は年々増加傾向にあり、新型コロナとの因果関係は不明確。外出自粛などが直接的な原因となった児童虐待は把握していない。「休業要請を受けて収入がなくなり経済的に困窮している」という保護者からの相談は受理している。児相としては家庭の経済状況が安定するまで子どもを預かるなど、複数の選択肢を提示した上で適切な対応を図っている。
-児相の対応マニュアルに変化は。
今の各家庭の経済的問題は、新型コロナ禍が影響しているかもしれない。ただ、児相としての対応が新型コロナ禍で特別に変わることはない。例えば十数年前にはリストラの嵐が社会問題としてあった。新型コロナ禍やリストラなどの背景はそれぞれ違っても、子ども側が受ける影響や事象は共通しており、児相が持つノウハウである程度対応できる。仮に子どもが感染した場合は、保健所などの各機関との連携が必要不可欠。児相としても子どもを預かる場合には電話の段階で、体温などの健康状態を細かくチェックするようにしている。
-全国の児相機関では保護者が感染した場合、子どもを一時預かるなどの措置が取られている。
本県では今のところ同様の事例はない。県や保健所など各機関と連携してマニュアルを作成しており、仮に保護者が感染した場合に子どもを預かるよう対応する体制は既に整っている。
-児相の勤務態勢は。
4月下旬以降、感染リスク低減を図ろうとケースワーカー(児童虐待の通告・相談を担当)を2グループに分けて勤務している。
-生活習慣の変化などもあり子どものメンタルヘルス悪化が懸念される。 今回の事態は、誰も経験したことがない事態。まずは感染させないことが最大のストレス防止になる。子どもによって対処できるストレスに差がある。例えば東日本大震災の発生後には精神的に不安定になる子どもが増えた。かといって不安定になったから病的ということではない。新型コロナ禍は「特殊災害」であり、第2波も予想される。通告数などが今後どのように変化していくか見通しが立たない部分はあるが、児相として打てるべき手を的確に打っていきたい。