【新型コロナ】「手話通訳の苦労や役割に理解深めて」多くはマスクでなく、フェースガードで対応

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手話で会話する中川原輝信会長。豊かな表情も重要な伝達手段となる=4月、八戸市

 新型コロナウイルスに関する記者会見の場で、手話通訳者が同席する場面が増えている。多くの場合はマスクを付けずにフェースガードなど付けて通訳作業を行っているが、これはろうあ者に内容を分かりやすく伝えるためのやむを得ない対応だ。ただ、そうした事情はあまり知られておらず、八戸市内のろうあ者や支援者は「手話通訳の苦労や役割に理解を深めて」と呼び掛けている。

 国や県など行政のコロナに関する記者会見では、多くが発表者の傍らに手話通訳者が同席し、身ぶり手ぶりを駆使している。その最中は、マスクではなく、透明なフェースガードなどで顔を覆っている場合が多く、会員制交流サイト(SNS)上では一時、「感染予防対策は大丈夫なのか」と心配する声が上がった。

 ろうあの当事者である、市ろうあ協会の中川原輝信会長は「手話はそもそも、表情やジェスチャー、口の動きなどを含めた表現方法なんです」と解説する。手は正確な語を表現できるが、それだけの情報量は決して多くない。「特に表情からは、喜怒哀楽の感情や、強調されている部分などの詳細が伝わりやすい」という。

 テレビやネット上の会見中継では、手話通訳者が画面に映されないケースも少なくない。同じくろうあ者である同協会の谷川泰男・手話対策部長は「最近はテロップや逐語訳も充実しているが、通訳による情報量は段違い」と、伝える側の意識変革を求める。最近は透明なタイプのマスクも注目されているが、「蛍光灯などの光が反射して見にくいのが残念」と指摘する。

 同協会の取材に手話で協力してくれた大橋敦子さんと奥山照美さんは、市障がい福祉課の手話通訳員。普段はろうあ者の通院に付き添ったり、講演を通訳したりと、健常者との橋渡しを行っている。

 手話を発話に、発話を手話にと絶えず変換し続ける作業は負担が重く、「休みを挟まないと、頸肩腕(けいけんわん)障害という症状を負いかねない」と大橋さん。奥山さんは「会見での通訳も、15分おきに交代しているんです」と話す。

 最近は通訳員も、会見以外ではマスクを着用して通訳する機会が増えた。大橋さんは「特に医療現場ではやむを得ないと思うが、双方の伝えたい内容を十分に伝えられているか気を遣う」とジレンマを吐露。奥山さんも「通訳者の人材は限られており、私たちが倒れるわけにはいかない」と打ち明ける。

 市は2019年に市手話言語条例を制定し、パンフレットを作成するなど市民への理解促進を進めている最中だ。「ろうあ者にも知る権利がある」と訴える中川原会長は、「現在、感染リスクにさらされながらも情報を伝えてくれている手話通訳者への敬意と、正しい理解を共有してほしい」と強調する。