性的指向などを本人の了解なく第三者に暴露する「アウティング」。三重県は3日、この行為の禁止を都道府県で初めて条例に盛り込む方針を決定した。LGBTなど性的少数者が直面する様々な問題の中にあって、当事者の心身に深刻なダメージを負わせてしまうというアウティングについて、Q&A形式でまとめた。(構成、共同通信=松森好巨)
Q アウティングとは。
A 性的指向(自分が好きになる性別)や性自認(自分の性別をどう認識しているか)を本人の了解なく第三者に暴露する行為のこと。こうした行為は悪意がある場合だけでなく、告白を受けた側がその内容に驚き、抱えきれず友人らに話してしまった結果、周囲に広まってしまうというケースもある。当事者は信頼している相手に裏切られたとショックを受け、周囲の視線を恐れて外出もできなくなる事例が多いとされる。
Q 焦点があたるようになったきっかけは。
A 2015年、東京都国立市の一橋大で法科大学院の男子学生が同性愛者であると同級生に暴露された後に転落死したことで社会問題化した。今年5月にも保険代理店の20代男性が、上司によるアウティングによって精神疾患になったと訴え、労災申請することが明らかになった。
Q 被害防止に向けた動きは。
A 国立市で18年4月、全国で初めてアウティングを禁止する条例が施行された。条例では性的指向や性自認の公表の自由を「個人の権利として保障される」と規定。公表を強制したり本人の意思に反して公にしたりすることを禁じた。罰則はない。また、筑波大も同年に「LGBT等に関する基本理念と対応ガイドライン」改訂版を公表。アウティングについて「故意や悪意によるものは、ハラスメントとして対処する」と明記した。
一方で、19年7月時点の共同通信の調査では、全都道府県と全政令市のうち、アウティングの禁止を定める職員向けのマニュアルなどを作成しているのは1割にとどまることが判明。対策の遅れが指摘されていた。
Q 国の対策は。
A 6月1日に施行された、大企業にパワハラ防止対策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法が挙げられる。何がパワハラに当たるかなどを示した指針も初めて作成され、アウティングもパワハラの一つとして例示された。今回の対象は大企業のみだが、中小企業も22年4月に義務化。罰則を伴う禁止規定はないが、違反企業には行政が勧告でき、従わない場合は企業名を公表する。
Q 三重県の条例の内容は。
A LGBTなど性的少数者への差別を禁止する条例で、性的指向などのカミングアウトを強制することも禁じる方針。鈴木英敬知事は3日の県議会で、アウティングについて「家族関係や就労関係を不安定なものにしたり、友人との人間関係を分断し孤立に追い込んだりしかねない」と指摘し、条例制定により被害防止への県民の理解を広めたい考えだ。20年度内の制定を目指し今後、有識者会議を設置し罰則の検討などを進めていく。
Q アウティングに関する相談窓口は。
A 一般社団法人「社会的包摂サポートセンター」が年中無休で無料電話相談を24時間受け付ける「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)を開設している。性的少数者向けの専門回線を設け、専門の相談員が応じてくれる。