女殺し屋がガン・フーとルチャ・リブレで攻撃⁉ リュック・ベッソン最新作『ANNA/アナ』

『ANNA/アナ』© 2020 SUMMIT ENTERTAINMENT,LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

まさにベッソン映画のヒロイン!“闘うヒロインもの”の最新バージョン

元ホームレスでジャンキー、どん底の生活に堕ちていた美女が才能を見出され、KGBのエージェントとして殺しを請け負う――。完全に「どこかで聞いたな、その話」という感じだが、一言でいってしまえば『ANNA/アナ』は女殺し屋ものであり、つまりは“ニキータもの”だ。

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しかし、その“ニキータもの”である本作の監督はリュック・ベッソン。『ニキータ』(1990年)を撮った人なわけで、元祖というか本家というか。実際、この『ANNA/アナ』は女殺し屋もの、闘うヒロインものの最新バージョンと言える内容になっている。

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KGBのエージェントでありつつ(任務の一環として)パリでモデルの仕事もこなす主人公アナ。『ニキータ』から一貫してのスレンダー美女だ。演じるのは新星サッシャ・ルス。実際にモデルとして活躍してきたという。体は細く、しかし眼差しは鋭く、脆さと強さが同居するさまは、まさにベッソン映画のヒロインだ。

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ただ、その「脆さ」がどこまで本当なのかわからないのが本作のミソ。どんな状況でも、アナは常に自由を求めて闘う。KGBからCIAに寝返って二重スパイと化し、かつての仲間を敵に回すことも厭わない。といってCIAもまた味方ではない。ストーリーの中でアナは運命に翻弄されているように見えるが、同時に運命に激しく抗っている。安易に“悲劇”をドラマの軸に据えていないのは『ANNA/アナ』の強みだ。

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“ジョン・ウィック後”の映画であり“ニキータもの”というジャンル映画

最大の魅力は、やはりアクションシーンだ。格闘技とガンアクションを融合させた、おなじみのガン・フー。手近な武器を大胆に使う格闘戦(レストランでのアクションでは割れた皿で敵を刺し、斬りまくる)。その残酷さも含めて、間違いなくこれは“ジョン・ウィック後”の映画だ。さらに相手に飛びついて倒す動きも。

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これはメキシカン・プロレス「ルチャ・リブレ」の技で、具体的にはカサドーラとコルバタという。『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020年)のアクションにもルチャが取り入れられていたが、体格で不利なヒロインが屈曲な男を倒すには“飛び道具”がいいということだろう。コルバタは実際のプロレスにおける男女対戦でも、女子選手がよく使う技だ。

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そんな“ひと工夫”もあり、『ANNA/アナ』はどこかで聞いたような内容をうまく見せていく。“ニキータものというジャンル映画”として楽しめる内容だ。ただ「5年後~3年前~3年後~半年前~」と時間が激しく行き来する展開は“伏線回収”というより“後出しジャンケン”に見えてしまう面もある。恋愛要素やセックスシーンも“サービス”なのかもしれないが、もっともっとハードでシャープな展開も観てみたかった。

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