不屈の「日産ネクスト」(1)決別から始まる経営

中期経営計画を発表する日産自動車の内田誠社長=5月28日午後、日産本社(同社提供)

 苦境に直面する指揮官は、自らを鼓舞するかのように幾度も「覚悟」と繰り返した。20年ぶりとなる6千億円規模の最終赤字決算を発表した日産自動車(横浜市西区)社長の内田誠は5月28日の記者会見で何度も口にした。

 「これはリストラではない」

 新たに示した4カ年の構造改革プラン「日産ネクスト」では、世界規模で生産能力を20%削減し工場の稼働率を引き上げ、利益の確保に動く。

 内田は「日産を再び成長の軌道に戻す」と力を込めたが、足元の落ち込みは、成長を見据えるには早計とも思えるほど、厳しい。

 2019年度の日産の世界販売台数は前年度比10.6%減の493万台に沈んだ。これは新型コロナウイルス感染拡大によるものだけではない。19年当初から、米中貿易摩擦や中国市場の停滞によって世界経済が頭打ちとなり、自動車市場全体が冷え込んでいたのだ。

 日産にとってのこの大きな低迷期に追い打ちをかけるようにして、20年1月以降「コロナショック」が生産と販売を直撃している。

 インターネットを通じた異例の記者会見で、内田は「挑戦し続けていきたい」と勇ましく締めくくったが終了直後にはこう不安を漏らしていた。

 「私たちの発表をどう受け止めてもらえたか関心がある。不十分な点があれば意見をいただきたい」

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 拡大からの決別、カリスマ経営からの決別-。肥大化した余剰生産能力を解消し、揺らぐ巨艦を立て直すことはできるか。岐路に立つ日産の今を追う。

=敬称略 全6回

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