農業施設10円売却問題 五島市長は差額支払わず 6月議会で議決求める

 五島市所有の農業施設を農業法人に10円で売却したのは違法だとして、市監査委員が野口市太郎市長に対し、適正価格との差額約168万円を市に支払うよう求めた勧告について、野口市長は差額を支払わないことを3日までに決めた。勧告ではこの場合、10円に減額し売却することについて市議会の議決を得るよう求めており、野口市長は10日開会予定の6月定例会に関連議案を提出する。
 問題の施設はハウスや作業棟など10施設からなる「玉之浦花き栽培施設」で、昨年4月、所有者の市が市内の農業法人に売却した。市側は耐用年数を過ぎているため1施設1円の計10円と評価していたが、監査委員が依頼した不動産鑑定士は、適正価格を計168万円と査定。監査委員は「10円は適正な対価と認められず、議会の議決も経ていないため違法な財産処分」と判断していた。
 野口市長は今回提出する議案で、昨年4月の施設売却額について、適正価格から167万9990円減額し10円とする可否を議会に諮る。減額理由を「安定的な営農の継続や雇用確保、農業振興を図るため」とするが、市場価値を適切に反映した不動産鑑定評価額168万円と、10円との乖離(かいり)は大きい。市民の財産をどう取り扱うのか、市議会の判断に注目が集まりそうだ。

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