ノーベル賞本庶氏「10年の辛抱、決着」小野薬品を提訴へ 226億円支払い求め

会見する本庶・京都大特別教授(京都市左京区・京都大)

 がん治療薬オプジーボの開発に関わって2018年のノーベル医学生理学賞を受けた本庶佑[ほんじょたすく]・京都大特別教授(78)は5日、同薬を製造販売する小野薬品工業が米製薬会社と争った別の訴訟で本庶氏が協力したことに対する適正な配分がないとして、小野薬品を相手に約226億円の支払いなどを求めて大阪地裁に提訴すると表明した。オプジーボ開発の対価を巡り同社と対立を続ける本庶氏は「10年近く辛抱してきたが決着をつけたい」と語った。 代理人弁護士によると請求対象は、オプジーボと同様の仕組みでがんに働く治療薬を販売する米製薬大手メルクから小野薬品が得る特許使用料の一部。
 本庶氏は1992年にオプジーボ開発につながる免疫制御分子PD1を発見。2006年には小野薬品と特許に関する契約を結んだ。本庶氏側によると、小野薬品などが米メルクと治療薬特許を巡って訴訟になっていた14年以降、小野薬品から協力を求められ、訴訟で得られる金額の40%を支払うという説明を受けた。訴訟はメルクが特許使用料などを支払うとの内容で17年1月に和解。しかし同年8月、小野薬品は本庶氏に、メルクから得た金額の1%相当のみを配分すると支払い通知をしたという。
 本庶氏側の説明によると、小野薬品の提示した配分基準では、昨年末までに計5億3600万円が支払われることになる。この金額は当初の説明と比べて、226億2300万円下回ると主張している。
 この日、京都市左京区の京大で会見した本庶氏は「企業はアカデミアの知的活動を正当に評価してほしい。私が先例となり、若い研究者が社会的に評価されることにつながればと思っている」と話した。訴訟を通して適切な配分が得られた場合、若手研究者を支援する基金に充てるとした。
 小野薬品は取材に「会見の内容を正確に把握しておらず、コメントできない」としている。

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