豪州SC:eシリーズ第9戦オーバル勝負は“インディ”ドライバーのマクラフランが久々の勝利

 全10戦を予定するVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーのeスポーツ・シリーズ『Supercars All Stars Eseries』の第9戦が6月3日(水)に開催され、2度目のオーバルとなったミシガン・インターナショナル・スピードウェイ3連戦の最終ヒートで王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)が勝利。ひと足先に仮想空間で“インディカー・デビュー”を果たしていた経験を活かし、久々の優勝を飾った。

 現在VASCシリーズ連覇中のマクラフランは、2020年シーズンに向けTeam Penskeのアライアンスを活用して北米オープンホイール進出を計画していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響でカレンダーが不確実性を増したことから、急遽同選手権のバーチャル戦『IndyCar iRacing Serise』で自身初のトップフォーミュラに挑戦。するといきなり北米レギュラー勢のスタードライバーたちを相手に2勝を挙げる活躍を演じて見せた。

 このSupercars All Stars Eseriesでも前回のオーバル戦が白熱した展開だったことを受け、急遽3ヒートすべてがミシガンでの開催に決まった第9戦は、新たに予選セッションの奇数組、偶数組を分けた“デュエル1”と“デュエル2”の予選レースフォーマットを導入した。

 しかし、そうした策も実らず奇数組のデュエル1は通算7度目のポールポジションとなる2016年VASC王者のSVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が勝利し、レース1のインサイド最前列を確保。偶数組も“予選最速男”の異名を取るアントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)が制し、アウトサイド2番グリッドに並ぶフロントロウとなった。

 この結果、28周最大レース時間22分のレース1と、おなじ距離ながらリバースグリッド採用のレース2は、直近10戦で7勝と手のつけられない覚醒ぶりを見せているSVGがともに制し、ニュージーランド出身“Kiwi”同士の対決に敗れたマクラフランは2位、3位と連続表彰台を獲得しながら一歩及ばずの悔しいリザルトとなった。

 そして迎えたこの夜最終ヒート。直前2ヒートの合計ポイント順でグリッドが決まるため、再びポールシッターとなったSVGを先頭に、2番手ブライス・フルウッド(ホールデン・コモドアZB/Mobil 1 Middy’s Racing)とサイド・バイ・サイドでターン1へと入ったマクラフランのオープニングオーダーで45周、最大35分間のレースがスタートした。

予選セッションから予選レースのデュエル、そしてレース1、レース2を制したのは”eスポーツ・マイスター”のSVGだった
レース1はオープニングで巻き添え事故をもらったチャズ・モスタート。雪辱を期したレース3だったが……

 すると16周目にSVGがアーリーストップを選択しピットレーンへと飛び込み、フレッシュエアのコースへと復帰。多くが1ストップのなかSVGは2ピット作戦を選び、セーフティカー発動も考慮して先頭集団を出し抜く狙いが明らかとなった。

 その動きを横目にリードラップを刻み続けたフロントパックは、21周目に動きを見せフルウッド、チャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB/Walkinshaw Andretti United)らがピットレーンへ。このタイミングでおなじくピットへ向かった現実のシリーズでチーム撤退のウィル・デイビソン(フォード・マスタング/23Red Racing)は、ピットレーンエントリーでスピンする失態を犯してしまう。

 この間、風切り役として隊列を引っ張ったパスカーレが27周目でピットへ向かうと、パック内で燃料消費を抑えていたマクラフランがいよいよ首位に。するとここで猛烈なプッシュを見せたマクラフランは、背後のフルウッドを引き連れて続くラップでピットレーンへと飛び込む。

 こうした最中に暫定首位に躍り出ていたSVGだったが、レース中盤以降の“フルコースコーション狙い”も実らず、31周目に予定どおり2度目のピットへ向かうと、結果的に16番手にまでポジションを下げて実質勝負の権利を失ってしまうことに。

 レース終盤に向けマクラフランの敵は、背後に迫るWAUモスタート、Erebusパスカーレのホールデン軍団による攻めのみとなったが、両者ともにeシリーズのタイトルコンテンダーから脱落してレースでの勝利のみを狙う執念を感じさせる執拗なプッシュを見せる。

 しかしこの猛攻が祟ったか、残りわずか4ラップとなったバックストレートでモスタートのコモドアZBがパスカーレのリヤにタッチし、両者ともにバランスを崩してErebusのマシンは堪えきれずスピン。これでWAUモスタートにはドライブスルーペナルティが出され、マクラフランが第5戦以来となる待望の4勝目を飾った。

 この結果、ランキング首位SVGと2位マクラフランは2165対2087とわずか78ポイント差まで詰まり、いよいよ最終決戦を迎える『Supercars All Stars Eseries』。第10戦は6月10日(水)開催で、シドニー南西部に位置する1962年創設のオランパーク・レースウェイと、オーストラリアン・モータースポーツの聖地バサースト、マウントパノラマでの最終決戦が待ち受ける。

このシリーズで常にフロントランナーであり続けるアントン・デ・パスカーレだが、タイトル争いには届かず
レース2では王者マクラフランへの好アシストを見せたファビアン・クルサード(右)。eシリーズ最終戦も、RBRA対DJRの構図となった

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