シーズン262安打 イチローの大記録はアンタッチャブルなのか?

2004年、イチロー(当時マリナーズ)は262安打を放ち、ジョージ・シスラー(1920年ブラウンズ:257安打)のメジャー記録を84年ぶりに更新した。161試合で762回打席に立ち、704打数で262本の安打を放ったイチロー。今後この記録を更新する選手は現れるのだろうか。

2004年のイチローは704打数262安打で打率.372を記録。メジャーでの自己最高打率でアメリカン・リーグの首位打者に輝いた(2001年に続いて2度目。キャリア最後の首位打者)。単純な話、イチローの記録を塗り替えるためには700打数以上で3割7分を超えるような高打率が必要ということになる。

メジャーリーグにおいてシーズン700打席を超えるのは決して珍しいことではなく、昨年もマーカス・セミエン(アスレチックス)の747打席を筆頭に9人が700打席以上を記録。しかし、シーズン700打数となると話は別で、1980年のウィリー・ウィルソン(当時ロイヤルズ:705打数)、1984年のフアン・サミュエル(当時フィリーズ:701打数)、2004年のイチロー、そして2007年のジミー・ロリンズ(当時フィリーズ:716打数)の4人しかいない。

この4人に共通しているのは、基本的に1番打者を務めていたにもかかわらず四球が少ないということであり、イチローとロリンズは49個、ウィルソンとサミュエルの2人に至っては28個しか四球を選んでいない。出塁率が重要視され、四球を多く選べる打者が重宝される現代において、シーズン700打数を記録するのは至難の業と言える。

また、3割7分を超える打率を記録するのも簡単なことではない。実際、2004年のイチローを最後に打率.370以上の打者は現れておらず、21世紀ではイチローと2002年のバリー・ボンズ(当時ジャイアンツ:打率.370)の2人だけ。イチロー以降では、2009年のジョー・マウアー(当時ツインズ:打率.365)が最高打率となっている。

シスラーは154試合制の1920年に631打数で257本もの安打を放ったが、これは.407という驚異的な高打率を記録したからにほかならない。シーズン安打数10傑に名を連ねる打者は、2004年(262安打)と2001年(242安打)のイチローを除く全員が.386以上の高打率(8人中5人は4割打者)をマークしており、シーズン700打数を記録するのが困難である以上、イチローの記録を更新するためには3割8分を超えるような高打率が必要不可欠であると断言していいだろう。

ちなみに、654打数で打率.386をマークした1925年のアル・シモンズ(当時アスレチックス)でも安打数は253どまり。やはりイチローのシーズン262安打はアンタッチャブル・レコードなのかもしれない。

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