長崎市「コンパクトシティー」促進 容積率最大2倍へ

容積率の拡大候補エリア

 人口減少や高齢化に直面する長崎市が、マンションやアパート、オフィスビルなどを建設する際の容積率を最大2倍に拡大する方針であることが5日、分かった。住まいの受け皿を増やしつつ、分譲価格などの抑制を図り、定住人口の確保などにつなげる。市北部の路面電車沿線や東部、南部の生活が便利な地域を中心に対象候補とし、今後、住民説明会などを経て詳細な地域を選定。来年度からの運用を目指す。

 住宅や施設を集約する「コンパクトシティー」づくりの一環。拡大方針については開会中の定例市議会に報告する。容積率の大幅な拡大は同市で初めて。
 容積率は、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合。10階が上限のマンションの場合、容積率が2倍になれば、単純計算で20階まで可能となる。1棟の戸数が増えれば1戸当たりの建築コストが抑えられ、分譲価格の抑制につながる可能性がある。
 高齢化などで市内斜面地から平地への住み替え需要は高いが、JR長崎駅周辺開発の影響もあり、利便性の高いエリアのマンション価格などは高騰。市都市計画課は、賃貸物件も含め相場が下がれば「若者やファミリー層も住みやすくなる」と強調。建て替え促進も期待する。
 市は長崎駅周辺などの一部で昨年、先行して容積率を拡大した。今後さらに公共交通機関が利用しやすい平地のうち、容積率の上限200%の地域は300%に拡大。大きな店舗や病院もある地域のうち、容積率の上限200~300%のエリアは400%とする。一部地域に設けている高さ制限は原則的に維持する。
 県宅地建物取引業協会長崎支部の田代圭介支部長は「土地の有効活用という点で合理的」とする一方、新型コロナウイルスの影響による消費マインドの低下を今後の懸念材料に挙げる。「斜面地や周辺部、景観問題についての対策強化も必要」と指摘している。
 容積率の拡大とは別に、市は雇用創出の一環として、開発が制限されている市街化調整区域のうち、交通アクセスがいい地域で工場などの立地も可能とするよう基準を見直す方針だ。用地不足を解消するとともに、市街化区域からの工場移転を促し、新たな住宅用地などの確保にもつなげる。

 


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