小さくても存在感は随一 見た目は70年代のスポーツカー「ケータハム・スーパー・セブン」

ロータス・セブンという伝説のスポーツカーがありました。ロータスの一販売店を営んでいた男性が、ケータハム・スーパー・セブンという名でその“走る喜び”を現在まで伝承してきました。その最新モデルがいよいよ日本で販売となりました。


見たことあるけど、あのクルマは何?

ちょっぴりマニアックなクルマなので最初に少し整理しておきます。このクルマを製造しているのはケータハムカーズというイギリスの自動車メーカーです。現在、この会社で製造され、日本で販売されているのはセブン160、セブン270(3タイプあり)、セブン480S(2タイプあり)、そして最強モデルのセブン620Rの4モデルがあります。その価格は407万円から946万円以上ということですが、どのクルマも全幅とエンジンのパワーなどが違うだけで、ドライバーが剥き出しになって運転するというスタイルは、同じです。

実はこのスタイルのクルマを初めて作ったのは、同じイギリスのロータスで、1957年にセブンという車名で製作を始めました。走ることに必要な最低限のパーツを集め、1台のスポーツカーを仕上げたのです。

全高は1,115mmしかありません

本来はサーキットレースなどを楽しむクルマでしたが、このシンプルな軽量スポーツカーは、軽快な走りとパワフルなエンジンとの組み合わせで驚異的なパフォーマンスを実現し、世界中に多くのファンを誕生させました。そしてこのロータス・セブンは、シリーズ4まで製造されていたのですが、1972年に残念ながら生産が打ち切りとなります。

当然のように世界中で惜しむ声が上がりました。ケータハムカーズの創設者、グラハム・ニアーンも、その一人でした。彼は1959年、つまりセブンの生産開始から2年後にロータスのクルマを販売するディーラーとして、ケータハムカーズを設立した人でした。以降、セブンの販売を続けてきたのですが、生産中止を耳にすると、大変残念に思ったそうです。

すると翌73年には、ロータスからセブンの製造権と一部の生産施設などを入手し、ケータハム・セブンとしての生産を始めました。これがまた人気を得ることになり、紆余曲折ありながらも、現在まで比類無きスポーツカーとして存在感を示してきたのです。世にスーパーカーと呼ばれ、数千万円もする高級スポーツカーはいくつもあります。それぞれに魅力的であり、注目されるスポーツカーがほとんどです。

シンプルですが細部まで作り込まれたインテリアは上質です

しかし、ケータハムのクルマはそこまでの高額車ではありませんが、これほど乗っている人が幸せそうで、楽しそうに見え、羨ましくさえ思える車も、なかなかありません。もちろん試乗テストともなればワクワクしながらその時を待つクルマの1台でもあります。

ヘリテッジを感じさせる外観

そのスーパー・セブンに今回加わったのがスーパー・セブン1600です。このモデルはベースになったセブン270Sと同じ、排気量1.6リットルの135馬力、フォード製シグマ・エンジンを搭載し、動力性能でいうと0から時速100km/hまでの加速が約5秒、最高速度は195km/hということになっています。

セブン1600ですが「1970年代の車が持つ魅力やカラーなどを彷彿とさせるデザインになっています」とケータハム側のコメントがあります。クラシカルな雰囲気を残しながら、その中身は現代のテクノロジーで仕上げてあります。

セブン270R。フロントフェンダーの形状などが違います

このクルマについて詳しくない人にしてみれば、全体のシルエット形状がほぼ同じですから、大きな変化があるように見えないかもしれません。それでも、よく見れば理解できる変更点があります。まずフロントフェンダーの形を見て下さい。セブン260R(白ボディ)はタイヤを包み込むようになっていますが、セブン1600はクラムシェル型フェンダーを装備しています。この形状のフェンダーは旧式のケータハム・セブンに装備されていたもので、当時から人気のあったスタイルなのです。

クラムシェル型フェンダーを装備しています

さらにリアに背負うように装備されたスペアタイヤ。8本スポークの14インチのアルミホイールと言えば、70年代の英国製スポーツカーでは、よく見られていた演出です。クラシカルなメカニカルパーツなどをボディに散りばめながら旧い雰囲気を魅力的に再現しています。ここにボディカラーとして標準4色を用意するだけでなく、「セブンの歴史から着想を得た」と言われる7色の専用カラーも、追加料金なしで選択できるそうです。こうして厩舎の雰囲気を持ったエクステリアは最新のボディカラーで装飾するという楽しみ方ができるわけです。

インテリアも豪華な仕様になっており、シートはフルレザー、ステアリングは銘品、モトリタのフラット・ウッドステアリングが採用され、いい雰囲気で仕上がられています。全体とすればワイルドなイメージが強いスーパー・セブンですが、セブン1600の豪華な作り込みのインテリアには上質ささえ感じ取れます。

軽さこそ最高の性能

このネオレトロともいえる仕上がりのコクピットに収まる運転感覚といえば、軽快で切れ味の鋭いハンドリング、ケータハムのスーパー・セブンならではのワイルド感のある走りということになるでしょう。ボディの大きさは、実のところ4月に発表となり、6月5日より発売が開始されたばかりのニューモデルで、残念ながら実際に走らせることは、まだできていません。

剥き出しで一見ワイルドだがレザー仕上げなど上質感は十分に表現できています

それでもベースになった270Sとほぼ同じスペックということを考慮すると、楽しく思いのままに操れる走りが想像できます。

ここでボディの大きさですが、もっとも小型のセブン160はスズキの軽自動車用ターボエンジンを搭載し、車幅も軽自動車枠に入るため日本ではイエローナンバー、つまり軽自動車として登録できます。

そして新型のスーパー・セブン1600は全幅が1575mmと、軽自動車のサイズ枠1480mmを越えていますので、排気量だけでなくサイズ面でも普通車としての扱いとなります。

それでもコンパクトなスーパー・セブン1600の最大の武器は565kgという軽さだと思います。ベースともなったセブン270Sよりは25kgほど重量は増えていますが、それでも他のクルマと比べれば軽量といえます。
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ちなみに軽自動車でも800kg前後ありますから、565kgという車両重量に対して135馬力パワーは十分に軽快感を感じる出力であることが理解できます。据え切りや極低速では、パワーアシストのないステアリングの操作は少しばかり重さを感じるはずですが、走り出してしまえば不便さや重さを感じることはほとんどないはずです。

軽さのある運転感覚をつねに感じながらドライブ

スーパー・セブンシリーズの中では、豪華さで一番かもしれませんが、現代のクルマとすれば最先端の運転支援装置などもなければ、スペース面でもかなり制約が多くなります。どんな状況でもドライブするには少しの油断も許されず、ハードな対応を要求されそうです。

もちろん走り出せば風も雨も容赦なく襲ってきます。ひょっとしたら助手席に乗ってくれる家族や友人はいないかもしれません。荷物もクルマの背後に乗せるとか助手席に積み込むとか、色々と不便があるでしょう。

純粋に走ることを楽しむためのスーパー・セブンですから、乗る人はそれさえも織り込み済みで付き合わなければいけないクルマなんです。でもスポーツカーというのは多少のストレスや疲労を感じるからこそ、スポーツカーだと思います。これで新着のスーパー・セブン1600は6,215,000円。豪華装備は多くは用意されていませんが、スポーツカーの本質的な価値、自在に操る楽しさがこの値段で手に入ります。世の中を覆っている閉塞感を吹き飛ばすには絶好のクルマがまた1台登場です。

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