<いまを生きる 長崎コロナ禍> レクナ・吉田文彦氏 世界的リスク回避、意識を

 核兵器、新型コロナウイルス、気候変動を切り口に長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の教員と各界の識者ら6人がそれぞれ対談する被爆75年事業がスタートした。県と長崎市、長崎大でつくる核兵器廃絶長崎連絡協議会が企画し、今月中旬から8月9日までに順次、ホームページで公開する予定。レクナの吉田文彦センター長に思いや展望を聞いた。

核とコロナ、気候変動について話す吉田氏=長崎市の長崎大文教キャンパス

 -企画の狙いは。
 核拡散防止条約(NPT)再検討会議をはじめ、被爆75年関連のいろんな取り組みもコロナで中止・延期となり、核への問題意識を広げる機会がしぼむのを懸念した。オンラインで何かできないかと考えた。

 -核、コロナ、気候変動はどう関係するのか。
 どれもグローバルで、逃げ場のない問題だ。気候変動には新たな感染症を引き起こすリスクがあるといわれる。パンデミック(世界的大流行)が起きれば紛争や最悪、核戦争に発展するリスクも否定できない。核戦争が起きれば地球寒冷化や飢饉(ききん)、医療崩壊につながるだろう。人生を守るためには、いずれのリスクも回避することが大切だ。

 -コロナ危機で米国と中国の対立が目立っている。世界はどこへ向かうのか。
 コロナは大きな不確実性をもたらし、国や地域社会の在り方、命について再考する機会を突きつけた。(米元国務長官の)キッシンジャー氏は、国際秩序の維持を訴えた。(長崎大熱帯医学研究所の)山本太郎氏はペストと同様、コロナも歴史の変化を加速させる可能性があると指摘した。(政治哲学者の)フランシス・フクヤマ氏は、変化は加速するが、どこへ向かうかは分からないと言った。

 -核にどう向き合うか。
 多くの人が、この数カ月のうちにコロナで生活や命が脅かされると実感した。気候変動もじわじわ迫っている。だが、核となると、リスクは巨大で常に存在するのに危機意識は高まらず、むしろ核軍拡に進んでいる。コロナや気候変動と同様、核問題についても国際秩序を守って進めることを強調しないといけない。

 -被爆地の役割は。
 世界がどう変化するか分からないとすれば、核軍縮の方向に変えることができる。同時に望まぬ方向へ進ませないことも必要だ。核を使ったらどうなるか、長崎と広島はその結末を知っており、発信できる。グローバルリスクは複数あり、どれ一つを置き去りにしても安心して暮らせないという意識を幅広く伝える点で、今は大きなチャンスだ。

 


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