【6月7日付社説】避難指示の解除/新たな選択肢と向き合う時

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 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域について、政府が除染をしていない地域でも放射線量が年間20ミリシーベルト以下の場合に避難指示を解除できるよう解除要件の見直しに着手した。政府はこれまで、避難指示の解除について、除染や自然減による線量の低減、インフラ整備、地元との十分な協議などを要件としてきた。

 帰還困難区域は広大で、特定復興再生拠点区域(復興拠点)を除けば今後の計画も示されていない。除染を前提条件とすれば、避難指示解除の先行きを見通すのは難しいのが現状だ。要件の見直しにより、避難区域の再生に新たな道筋ができると前向きに捉えたい。

 要件の見直しは、飯舘村が帰還困難区域の長泥地区について、復興拠点から外れた地域についても一括して避難指示を解除するよう求めていることが契機となっている。村は、復興拠点以外については、解体した家屋の周辺などを除き除染を求めないとしている。

 村の要請の背景には、除染完了を待っていては復興が進まないとの懸念がある。完全な除染よりも早期の避難指示解除が復興に有益と判断するならば、政府に解除を求めるのは理にかなっている。

 東日本大震災や原発事故を巡っては、被災市町村の要望が具体的であればあるほど、政府の後押しが受けやすい面がある。7市町村は復興の道筋、帰還困難区域の利用計画などをできる限り明確にし、政府などを動かしていくことが大切だ。

 要件の見直しが明らかになり、飯舘村を除く6市町村では反発や困惑が広がっている。大熊町の吉田淳町長は未除染での避難指示解除について「土地をきれいにして返すのが原則」と述べ、改めて除染の完遂を求める考えを示した。

 帰還困難区域の再生の責任は国にある。新たな枠組みにより、地元が望まない解除が行われることがないよう、地元の土地利用の考えなどを丁寧に聞き、反映していく仕組みづくりが不可欠だ。

 政府は、復興拠点外の帰還困難区域の在り方について一定の方針を示すとしている。復興を促すために早急に方針を示してほしい。

 復興期間が本年度で終わるのを受け、復興庁の存続などを定めた改正法が成立した。復興の司令塔役となる同庁の機能は2030年度まで維持される。31年度以降も復興施策が十分な予算を伴って展開できるかは不透明だ。

 各市町村には、同庁が存続中に実施すべき事業を見極め、除染を求めることと並行して、復興を前に進めていくことが求められる。