事前防災行動計画 コロナに応用 対応の目安 見える形で

飯塚市のコロナ対応タイムライン

 水害時、自治体や住民が取るべき行動を定めた「タイムライン(事前防災行動計画)」を新型コロナウイルス感染症の対応に応用して、独自の「コロナタイムライン」を作った自治体が注目されている。いずれも情報提供を通して、住民の安心につなげる狙いだ。
 3月下旬以降、4人が感染した福岡県飯塚市。感染拡大期の5段階と収束期の2段階に分け、公共施設開館などの目安を短い文章にまとめ、4月初めに公表。「感染発生時、市が何を行うのか、市民に見える形で伝えることで不安を和らげられる」と担当者。
 土砂災害に備えた行政タイムラインを運用する大阪府河南町は3月末、コロナ感染症対応のタイムラインを策定。町の新型インフルエンザ等対策行動計画を基に、8段階の感染状況に応じて、9部局の行動を決めた。担当者は「対策の抜けを防止できる。第2波に備え、改良を続ける」と利用価値の高さを指摘する。
 2015年に全国初の風水害タイムラインの運用を始めた三重県紀宝町も同様のタイムラインを作成。11課約80人が健康管理や住民対応、学校の管理、広報などを感染状況に応じて分担する。
 出水期を前に、町民約1万人の避難行動を聞き取り調査した。「3密」回避に必要なスペース確保が難しく、各自の避難場所を見直すためだ。担当者は「住民の安心には、感染予防と情報提供しかない。避難場所を決め、早めの避難行動を啓発する」と語る。
 タイムライン策定を提唱する東京大大学院情報学環総合防災情報研究センター客員教授の松尾一郎氏(長崎市出身)は「内外の感染状況で対応のフェーズを引き上げたり、引き下げたりすることができる。対応の目安が分かっていれば、自治体も動きやすく、住民の安心に寄与するし、先を見越した対応が適切にできるはずだ」と話す。


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