「あなたの国に訪問し、投資をしたい」続出する“国際ロマンス詐欺”のメールに返信してみた

国際ロマンス詐欺の被害が続出しています。これはSNSで友達になって、メールなどでやり取りをしながら、相手に恋愛感情を抱かせて、お金を騙し取る手口です。今、新型コロナの影響で在宅でのネット利用者も多いので、この詐欺にひっかかる人も出てくる恐れもあり、十分な警戒が必要です。


イタリア人船員、カナダ人眼科医……

今月、イタリア人男性の船員を騙りメールのやりとりをして、50代女性から1億円もの金を騙し取った、中国籍の男が逮捕されています。この男はメールのやりとりをした人物ではなく、現金を引き出す役でした。国際ロマンス詐欺では、メールを送るのはたいがい足がつかないように海外のグループが行い、国内のグループはもっぱら銀行口座に振り込ませたり、お金を引き出す役を担っており、役割分担をしながら騙してきます。この女性は、7回にわたり、お金を振り込んでいますが、なぜ繰り返しお金を払ってしまうのでしょうか。そこには、詐欺の側の巧妙な手口があります。

実際に500万円の被害に遭った30代女性のケースです。

女性はSNSで国境なき医師団にいるというカナダ人男性の眼科医と知り合いました。そして、無料通話アプリで、メッセージや電話でやりとりするなかで、男は「ハニー」「アイラブユー」「ユアープリティ」といった甘言を弄しながら「君と結婚したい」「安全な日本で一緒に暮らしたい」と言ってきました。この期間が毎日、一か月も続いたそうです。

この男の極めつきの殺し文句は「他の女性にも言い寄られているけれども、君と結婚したい」でした。そして、「母がイギリスにいるので、君のことを報告してから、日本に帰る。自宅のカナダから、荷物と一緒に、ゴールドも送るので、受け取っておいてほしい」とお願いをしてきました。「信頼しているのは、君だけなんだ。お願い」という熱い言葉に根負けして、彼女は荷物の受け入れを了解しました。

ところが男が日本にくる直前になって、急な連絡を入れてきました。

「イギリスの母親の病気が悪化した」
その後、エマージェンシールーム(救急治療室)で、「母親は亡くなった」と彼女に告げ、男は電話口で号泣し始めます。

しばらくして今度は、外国の配送会社を騙った外国人から電話が入ります。

「金貨の税金を払っていないから、税関で止められた。これでは、ゴールドを受け取れない。お金を払ってください」と、つたない日本語で話します。金額は30万円ほど。彼女が驚いて男に連絡すると「母親が亡くなったので、それどころではない。お金を立て替えてほしい」と懇願します。結婚を意識している彼女は、お金を払うことにしました。

国際ロマンス詐欺では、一度でもお金を払うと、次々に払わせようとします。再び、同じ外国人から電話があり、「X線を通ったら、金の量が多く、税は98万円になった」と言われて、残りの70万円を払いました。

今度は後日、エージェントを名乗る男から「彼が日本で住むために契約していた家賃の支払いがまだだ」と言われて、70万円を振り込む。彼女自身、もはや後戻りできない気持ちになっており、次々に払ってしまいます。しかも、詐欺師たちは、ダメを押すことも忘れません。男の妹と称する女性が電話に出て、こういうのです。

「いつも、兄のためにサポートしてくれてありがとう!」
結果、詐取された金額は500万円に膨れ上がりました。

これは詐欺の一例ですが、他にも、女性に結婚を意識させたところで、「軍隊を抜けたいから、お金が必要」などと、いってくることもあります。

男性も狙われている

これは女性に起こることだから、と安心してはいけません。男性も狙われています。

私のSNSにも、様々な外国人女性から友達の申請がきます。そのなかで40代アメリカ人女性の申請に、のってみました。この人は軍関係で医師をしていると言います。何度か、メールのやりとりを重ねました。

ある時、「私は非常に恐ろしい国にいます。この場所が全世界で最も危険な場所です。多くの人が私たちを攻撃してきました。勇敢な兵士たちは、タリバンの冷たい手の中で命を失ってしまっています。今、メッセージを送るために、コンピュータ室から、(命がけで)あなたに連絡しています」と連絡してきました。

どうやら、アフガニスタンのようです。そこで、私は「大変な状況なのですね。怖いところなのですね」と打ち返すと、「あなたと友達になってうれしい。あなたは非常に良い人だ。任務が来月末で終わるので、お会いしたいです」と言い出します。

「そうですね。日本にこられるのですね」と返信すると

「私はあなたの国に訪問し、投資をしたいと思っています。あなたのことを、もっと知りたい。あなたと、友人、兄弟、パートナーのようになりたいです。ビジネスの支援をしてほしい。お願いできませんか? あなたからの返事を聞いて待っている、素敵な夜を持っている」

私と深い仲になって、ビジネスの支援をお願いしたいようです。何やら、きな臭い話。よし、さらにのってみようと、「素敵な夜を、楽しみにしています」と返信しようとしましたが……ん? ん? 送れず。

いきなり、この女性のアカウントが停止しました。どうやら誰かがSNSの運営会社へ「詐欺」の通報をしたようです。調査はここまでとなり、残念なことに、私のもとに素敵な夜はやって来ませんでした。もちろん、メールのやりとりをしても、悲惨な夜しかこなかったとは思いますが。

実際に、男性が被害に遭うケースも

今年4月SNSで知り合ったロンドン人女性とメールのやりとりをしていた、70代男性が3,200万円を騙し取られています。その時、女性は「自分は末期のガンにかかっていて、余命あとわずか」と言ってきたそうで、さらに「自分には資産があるので、それを受け取ってほしい」とも。その後、外国の銀行関係者と連絡を取り、手数料などの名目で繰り返しお金を振り込み、高額な被害になりました。私の時は「投資」でしたが、この高齢男性の場合は、「贈与」という、お金絡みの話で騙そうとしてきます。

このように男性を狙うロマンス詐欺もあります

女性の場合と違うのは「ハニー」「アイラブユー」とは言ってきません。男性へは「かわいそう」という憐憫の情を喚起しながら、「あなたにしかお願いできない」と男心をくすぐってきます。女性には結婚などの「愛」を用いますが、男性には「同情」から、お金を出させようとします。性別によって、手口を変える、国際ロマンス詐欺には、ぜひとも警戒してほしいと思います。

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