MotoGPの軌跡(8):Moto2から昇格した大型ルーキー、マルク・マルケスがデビューシーズンにタイトル獲得の偉業

 2001年までの世界GP(WGP/World Grand Prix)の略称で行われていたロードレース世界選手権。2002年から最高峰のバイクが4ストローク990ccとなり、シリーズの名称もMotoGPへと変更された。しかし、MotoGP初年度は2ストローク500ccマシンと4ストローク990ccマシンが混走する状況でのスタートとなった。2002年から2019年までの『MotoGPの軌跡』を連載形式で振り返っていく。

——————————

 2013年シーズンはルーキーのマルク・マルケス(ホンダ)がさまざまな記録を更新して、最高峰クラス参戦1年目でチャンピオンを獲得した。第2戦オースティンで史上最年少記録(20歳と63日)で初優勝を達成。シーズン通算6勝、18戦中16戦で表彰台に立ち、史上最年少でチャンピオンを獲得した。デビューイヤーで最高峰クラスのチャンピオンとなったのは、ケニー・ロバーツ以来。ホンダはライダー、コンストラクター、チームの3冠を獲得した。

 ディフェンディングチャンピオンのホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)は、第7戦オランダGPで鎖骨骨折を負いながら、緊急手術でレースに強行出場し、タイトル連覇への強い意欲を見せたが、続く第8戦ドイツGPでの転倒で、再び鎖骨を痛めてしまう。最終戦までタイトル連覇の望みを捨てなかったロレンソは、マルケスと4ポイント差のランキング2位に終わったものの、シーズン最多の8勝を記録した。

 一方、ダニ・ペドロサ(ホンダ)は、シーズン中盤までチャンピオン争いをリードしながら、ドイツGPでのケガ、第14戦アラゴンGPでのアクシデントによるノーポイントなどツキに見放された面やシーズン3勝に留まったこともあり、ランキング3位に終わった。

 2013年シーズンは、マルケス、ロレンソ、ペドロサの3強と呼ばれるライダーたちが一歩飛び抜けた存在だった。ヤマハに復帰したバレンティーノ・ロッシはタイトル争いに加わることはできなかったが、1勝を記録、6回の表彰台を獲得してランキング4位を獲得した。

 CRTマシンでMotoGPに復帰した青山博一は、マシントラブルやチーム体制の問題、中盤戦に負ったケガによる欠場などで苦戦を強いられたが、シーズン後半には着実に入賞圏内でフィニッシュ、マレーシアGPの11位をベストリザルトにランキング20位となった。CRTのランキング最上位は、2年連続でARTのマシンを駆ったアレイシ・エスパルガロのランキング11位だった。

■2014年シーズンは再び強さを取り戻したバレンティーノ・ロッシ

 2014年シーズンよりMotoGPクラスは全車に共通ECU(エレクトリック コントロール ユニット)の使用が義務付けられることになり、ファクトリーオプションと、オープンの2クラスのマシンが混走となった。オープンにはホンダの市販レーサーRCV1000Rが投入、ヤマハは前年度モデルのYZR-M1をリースパッケージとして供給した。

MotoGP 2014年シーズンも制したマルク・マルケス(ホンダ)

 MotoGPクラス2年目もマルケスは数々の新記録を樹立。開幕戦から10連勝を達成。シーズン通算13勝、13回のポールポジション獲得など、MotoGPクラス2連覇を21歳237日の至上最年少記録で達成する圧勝ぶりだった。

 ロッシはシーズン序盤からコンスタントに表彰台圏内でフィニッシュ、サンマリノGP、オーストラリアGPと2勝を記録。マルケスとも何度もバトルを繰り広げるなど、ヤマハ復帰2年目で、強いロッシが戻り、ランキング2位を獲得した。

 ロレンソは2014年シーズン前半戦は歯車のかみ合わないレースが続いた。第2戦アメリカズGPではまさかのジャンプスタート、マルケスとのバトルとなったレースでも、シーズン前半は本来の勝負強さを発揮できないレースが見られた。しかし、第14戦アラゴンGPでシーズン初優勝を記録した後は、第15戦日本GPでも連勝。ランキング3位でシーズンを終えた。

 ペドロサはシーズン前半戦はコンスタントに表彰台を獲得。第4戦スペインGP後に受けた腕上がりの手術の影響が見られたが、第7戦カタルニアGPではマルケスを最終ラップまで追い詰めた。そして、第11戦チェコGPではマルケスの連勝にストップをかけ、ランキング2位をキープしていた。しかし、シーズン後半の転倒ノーポイントでランキング2位争いから後退、ランキング4位でシーズンを終えた。

 マシンのレギュレーションの優遇措置を受けたドゥカティのアンドレア・ドビジオーゾはランキング5位。予選では優遇措置であるワンランクソフトのタイヤのメリットを生かして、フロントロウに並ぶなど活躍を見せたが、2回の表彰台に留まり、4強の一角を崩すことはできなかった。

 オープンのRCV1000Rで参戦した青山博一(ホンダ)はアラゴンGPの8位をベストリザルトに18戦全戦で完走、17戦で入賞し、ランキング14位を得た。

© 株式会社三栄