国内4万人以上で一斉抗体検査、陽性率0.43% 使用検査キットの信頼性も公表 ソフトバンクグループ

ソフトバンググループが9日夜、同社のYouTubeチャンネルで同社が調達した抗体検査キットによる44000人あまりの検査結果について速報し、専門家の意見を聞きながら今後の活用の可能性について報じた。それによると陽性者は191人で0.43%となった。検査キットの信頼性についても独自に検証結果を公表、おおむね問題ないとの評価をその場で得ていた。

使用検査キットは2種類、いずれも感度、特異度に大きな問題は見られず

抗体検査キットとは、感染後に体内に現れる抗体の有無を調べることで「以前感染していたか否か」を判定するものだが、特に中国企業が生産するキットの判定能力には疑問が多いとして懸念されていた。今回同社社長である孫正義氏が調達したキットに関しても一部から疑問が出されていた。本日の発表では、検査には2社の検査キットを使い、判定能力についても検証したことを明かした。

その報告によると、使用したのはINNOVITA社、Orient Gene社の検査キット2種。前者に関してはまず新型コロナ流行前の検体で検査を行い陰性率100%だったことを確認しており(特異度100%)、PCR陽性患者87名の検体で調べたところ、感度87.3%と、メーカーが出している値と同じであった。後者に関しては、メーカーの公称値の母数が少なかったところを、今回の検証では19000人あまりの母集団に対して検査を行い、感度97.22%、特異度99.99%であり、信頼区間に問題がないと報告した。同席した感染症の専門家の一人である大曲貴夫・国立国際医療研究センター理事長特任補佐(国際感染症センター長)、杉浦亙・同臨床研究センター長も、INNOVITA社の検査キットの感度87.3%に関しては「実際はもう少し多くの人が陽性であったろうと想像される」と発言したほかは、検査精度について問題はないとの認識を示した。

全体の陽性率0.43% 歯科医、助手の陽性率が有意に低いと出る

その上で、同社は「データは自己申告によるもの」と断った上で種々の報告を行った。まず全体の陽性率は0.43%で、地域的には以前に厚生労働省がまとめた分布と酷似していると信頼性について示唆し、医療機関の被験者のなかでは歯科医師とその助手の陽性率が優位に低いと報告した。これには大曲氏も「今後の精査が必要だが、これまでは逆に多いのではないかと思われていただけに驚きだ」と語った。

また報告の中で孫社長は、抗体検査では発症から8日以降に陽性が出やすくその精度も高いとした上で、先ごろ認可された唾液を検体とするPCR検査では、発症前の無症状患者を捕捉しやすいとされていることから、これらを「前後」で組み合わせることにより、より効果的な感染拡大防止の打ち手になると語った。

抗体検査をめぐっては、厚生労働省が東京、大阪、宮城の3都府県で、無作為に抽出した20歳以上の男女計約1万人を対象に現在検査を実施しているが、今回同社が公表した調査対象数は44000人余りとその数において上回っており、抗体検査の有効性を検証するうえで有意義な材料となる可能性がある。

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