イケア、アディダス、ウォルマート…CSO(最高サステナビリティ責任者)の設置が重要な理由

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これまで、サステナブル(持続可能)な思考がユーザーに広がったことにともなうコミュニケーションの在り方の変化や、重要性をお伝えしてきました。環境・社会・ガバナンス(企業統治)を重視するESG投資への気運も高まっており、サステナビリティを経営や事業戦略といかに連動させていくのかを考えることは、企業にとって生き残る活路になるでしょう。この流れを汲み、近年、「CSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者)」という役職を新設する企業も増えています。最終回の今回は、CSOを設置する企業の取り組みをとおし、リテールが進むべき方向を考えます。

CSOのいる企業のサステナブルな取り組みとは?

パタゴニアが展開する「ReCrafted」の専用サイト

まずは、ご存じホームファニシング大手のイケア(IKEA)から。同社は早くからCSOを置く企業の一つです。イケアは2030年までにすべての商品をリユース、修理、アップグレード、そしてリサイクルされるように設計すると宣言しています。実際、サブスクリプション型のレンタルサービスを昨年2月にスイスでスタート。ベルギーの店舗でも中古製品の販売事業や再塗装や再組み立てを行う修理事業が営まれており、大量生産・大量販売から循環型のビジネスモデルへとダイナミックな変革が行われています。

続いて、スポーツ用品メーカーのアディダス(Adidas)です。同社は19年に「FUTURECRAFT.LOOP」というプロジェクトを発表しています。そのコンセプトは、「100%リサイクル可能なランニングシューズ」。購入者が履き終えてストアに返却したシューズを新しいシューズへと100%リサイクルするというものです。回収・再利用が前提のため、プロダクトは単一素材でつくられ、接着剤すら使われていません。現在、試験を終えた第一世代のシューズが二世代目として生まれ変わり、21年春夏の発売に向け、さらなる検証が図られている段階です。

3社目は、サステナブル経営における先進企業の1つとして知られるアウトドアメーカーのパタゴニア(Patagonia)です。同社は、顧客から回収した年間10万点もの衣類を70カ所ある拠点で修復し、専用のオンラインストア「wornwear.com」で販売。商品の回収に協力した顧客にはギフトカードを渡し、製品を再び購入するという流れも構築しています。

パタゴニアはこのほか、修復できない衣類を組み合わせて製造したプロダクトを販売する「リクラフテッド(ReCrafted)」という取り組みも海外で展開。これは、同社が「最上級の『アップサイクル』(単なる再利用ではなく元の素材・製品よりも品質・価値の高いものをつくる方法論)」と誇る取り組みです。

以上の企業に共通するのは、サステナブルな道を選んだうえで製造方法を見直し、さらには循環される二次流通までを見据え、ブランディング活動を行っているところです。企業がサステナブルなビジョンを達成していくには、これまで築いてきたサプライチェーンの仕組みやビジネスモデルを大胆に変えることは、必須と言えるでしょう。

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ウォルマートは金融大手と組みサステナビリティ向上のためのネットワークを発足!

米小売最大手のウォルマートもサステナブル経営を推進

もう一つ、流通小売業界から米ウォルマート(Walmart)」の事例を紹介しましょう。同社と英メガバンクのHSBCがタッグを組み、環境サステナビリティを向上させたサプライヤーに対してHSBCが好条件のファイナンスの提供を行うほか、食品・消費財業界のサステナビリティ向上ネットワーク「サステナビリティ・コンソーシアム(TSC:The Sustainability Consortium)」を発足。業種を超えた提携のもと、大規模な活動を行っています。

ウォルマートはこのほか、米シンクタンクWRIの呼びかけで、世界で年間13億トンにも上る食品廃棄物削減をねらって立ち上げられた「10x20x30食品廃棄物削減イニシアティブ」にも参画。これには日本のイオンをはじめ、イギリスのテスコ(Tesco)、フランスのカルフール(Carrefour)なども参画しており、国を超えた食品ロス削減の取り組みが活発化しています。ここまでくると、サステナブルは事業そのものであることを、ますます実感できるのではないでしょうか。

CSRを紐づけた新たなビジネスモデルの創造が急務

このように、世界的な企業が次々にビジネスとCSR(企業の社会的責任)を融合させ、新しいビジネスモデルを創造しています。ここまで紹介した企業のように会社を挙げて推進していくには、CSOを設置し経営に対する強い発言権を持たせること、そしてCSOにDX(デジタルトランスフォーメーション)を任せることが重要と考えます。

さらに言えば、こうしたことは、昨今消費者から支持を得ているD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)企業がすでに取り組んでいることでもあります。リテール市場において後発組である彼らは、市場への新規参入にあたり、サステナブルなビジネスモデルをあらかじめ設計したうえで競争に臨んでいるのです。

一方、既存のリテール企業はどうでしょう。昔ながらのビジネスモデルや商習慣を続けているところがまだまだ多いのではないでしょうか。このギャップを埋められないことには、リテールの中心をD2C企業に取って代わられる日が来たとしても、おかしくはありません。

とくに、世界各国の中でも人口減少の傾向が著しい日本では、本来であれば、どの国よりも先にビジネスモデルをサステナブルな方向に転換する必要があったはずです。しかし、欧米と比べて感度が今一つであることは否めません。これまでの利益第一主義から「ソーシャルグッド」(社会貢献度の高い経営活動を貫く姿勢)へとビジネスモデルをいかに変革していくかが喫緊の課題です。

ただ、ここで確実に言えるのは、“変われた企業は生き残れる”ということです。DXによる社会課題の解決とビジネスモデルの融合に挑む企業が一社でも増えることは、日本の活力にもつながるはず。そんな期待を寄せながら、私もリテール業界のイノベーションをさまざまな角度から支え、また見守っていきたいと思います。

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