<ブレーク盤>Maica_n『Unchained』世代超えて聴け、なおかつカッコいい

 佐賀県出身、徳島県育ちの2000年生まれの女性シンガーソングライターによるメジャー・デビュー作。硬派な日本語詞、スムーズな英語の発音、飾り気のないビジュアルなどから初期の宇多田ヒカルを想起した。

 とはいえ、全5曲を聴くと、さらに遡って70年代前後の洋楽ロックにも通じる懐かしさや親しみやすさがある。音楽をかけながらのドライブのように爽快かつリズミカルな『HYW 55』、人の噂など気にせずに突き進もうと歌う『Unchain』、さらに穏やかなミディアム調の『Go my way』など、声を張らずに歌う言葉が、素直に心に伝わる。

 特に、年輩の方におススメしたいのが、斉藤和義がギターで参加した『Flow』。サビの「Baby,come down with no words」のあたりは、思わず体を揺らしたくなるほど心地良い。ラストの『海風』は、「いつまでも いつまでも 夢を見てる私」といった10代らしいあどけない描写もあり、決して背伸びしている訳でもない。全体を通して、二世代、三世代が安心して聴けて、なおかつカッコいい。

 初回限定盤は、『Unchain』のMusic Videoと、CDと重複しない3曲のスタジオLIVE収録のDVD付き。熟練のミュージシャンに囲まれ堂々と歌っており、勢いに任せても破綻がなく頼もしい。本作を聴けば、若い人達の才能にもっとワクワクできるはず。

(ビクター・CD+DVD 初回限定盤 2300円+税)=臼井孝

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