時の記念日

 長崎新聞の紙面に「9月入学」が初めて登場したのは2006年の8月末。当時、小泉純一郎内閣の官房長官で、自民党総裁選の有力候補だった安倍晋三氏が政権公約の柱に掲げた「教育再生」の一環だった-らしい▲意外に長い歴史のある構想がこの春、新型コロナの流行に伴う休校措置の長期化を背景に再燃した。首相も一時、前向きな姿勢を示したが、先月末に見送りを表明して結局は幕引き▲議論にこれまで見るべき前進がなかったのは、さまざまなハードルがあるからだ。首相も知らないはずがない。第一、外出にも会合にも神経を使う状況が続いていたのだ、多方面に影響の及ぶ大改革など今はできるわけがない。少し考えれば誰にも分かる▲急ぐべきは、子どもや保護者の“今”の不安に応えることだ。入試ならば時期を調整したり出題範囲を狭めたり、いくつか方法はありそうなのに、と考えていたら、昨日の紙面に「月内に方針を」と小さな記事がある。遅い遅い▲1面は将棋の藤井聡太七段の白星発進を伝えている。双方が持ち時間を使い切り、1手60秒で指し続けた最終盤の応酬は見応えがあった▲ぐずぐず足踏みが続いたり、濃密な1分があったり、時間もいろいろだ。10日は「時の記念日」…昔も今も遅刻常習犯のわが身は棚に上げつつ。

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