「憧れの舞台で全力プレーを」「全国の球児への思いやりを持って挑んでほしい」-。一度は幻と消えた夢切符が手元に戻ってきた。中止になった春の選抜高校野球大会に出場予定だった32校を招待する「甲子園交流試合」の開催が決まった10日、招待校の一つ、創成館(長崎県諫早市貝津町)にも笑顔の輪が広がった。選手たちは選ばれた“代表校”としての強い覚悟を口にした。
練習が始まる午後4時すぎ、グラウンドで稙田龍生監督が選手たちに朗報を伝えた。勝っても負けても1試合きりの舞台だが、そこでのプレーをいったんは諦めていただけに、指揮官は「本当に感謝したい」と声を弾ませた。甲子園に行けない他の多くの学校にも触れて「何試合分もの気持ちを込めてやっていく」と意気込んだ。
その様子を見守った奥田修史校長は「うれしいというのはあるが、ほっとしたというのが正直なところ。(大会が相次いで中止になった後も)3年生は私生活も授業も腐らず、落ち着いていて立派だった。先日それをほめたばかり」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
7月10日~8月2日は、選抜同様に中止となった夏の甲子園予選の代替県大会も開かれる。稙田監督は選手たちに「お願い」として同大会で優勝を目指すことをあらためて確認。上原祐士主将も思いは同じで「そこはぶれない。さらに明確に、高い意識でやれる。一日一日を大切に、出られない高校の分まで一生懸命プレーしたい」と気を引き締め直していた。
上原主将の父で保護者会長の元治さんは「子どもたちをどう励ましていくのかを話し合ってきたが、答えがなく、何とも言えない状態だった。うれしい限り。選抜出場決定からだいぶ時間がたっている。選ばれるだけの実力をしっかり示して」とエールを送った。
3年のマネジャー中島愛梨さんは、2015年夏に2年生で甲子園に出場して16年は主将を務めた兄の巧喜さんに憧れて入部。「夢だった。全部、力を出し切ってほしい。私も“おまえが良かった”と言われるように最後までサポートしたい」と言葉に力を込めた。
創成館に笑顔と決意 甲子園交流試合 戻った夢舞台“切符”
- Published
- 2020/06/11 00:01 (JST)
- Updated
- 2020/06/11 15:32 (JST)
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