驚くほど進化しているクルーズコントロール
「クルーズコントロール」と呼ばれる装備をご存知だろうか?
高速道路走行時にドライバーをサポートするアイデアで、セットするとドライバーがアクセルペダルから足を離しても速度を一定に保ってくれる機構だ。ドライバーのアクセル操作に代わり、状況に応じたエンジン回転にクルマ自ら制御するのである。ドライバーはアクセルを踏み続けなくてもいいから疲労を軽減でき、高級車を中心に1980年代から存在している。
そんなクルーズコントロールが、近年は驚くほど高度に進化。そして軽自動車にも搭載が進んで身近になっているので、今回はその話をしよう。
現在主流のACCにも種類は様々
まず進化だ。かつてクルーズコントロールといえば「速度を一定に保つだけ」だった。ところが90年代中盤になると、前方の状況を把握して、自車の速度を前を走るクルマに対し自動調整しながら追従走行をする制御が登場した。「速度を一定に保つ」から「状況に応じて自動調整する」へと大きく進化したのである。これが「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」と呼ばれるものだ。減速までおこなってくれるのである(ただしACC単体では急ブレーキまでは対応できない)。
そんな便利なACCだけど、ベーシックなタイプでは、渋滞などで車速が低くなるとドライバーの介入が必要となる。制御が難しくなることを理由にシステムの作動がキャンセルされて速度管理がドライバーへと戻されるからだ。その際の下限速度は30km/h程度が一般的で、渋滞時は利用できない。
「渋滞対応ACC」なら低速域もフォロー
しかし、なかにはノロノロ走行するような低速域まで利用できるタイプも存在する。これが「渋滞対応ACC」と呼ばれるものだ。停止するまではACCが機能するので渋滞時のドライバーの手間は大きく省けるようになる。ただし、これにも足りない部分がある。車両が完全に停止すると「停止保持」はおこなわずシステムがキャンセルされる仕掛けになっているのだ。
もっとも高機能なのが停止保持機能付き
さらにその先、ドライバーの操作なしに「完全停止後の停止保持」までをおこなう仕掛けも登場。これが「停止保持機能付きACC」である。渋滞で完全停止したあとも、再発進する停止中まではドライバーの操作が必要ないのだから便利だ。いま、もっとも進んだACCのタイプといえる。
最新車種別ACC比較
冒頭に書いた通り、そんなクルーズコントロールはいま、軽自動車にも搭載が進んでいる。しかも主流は速度を自動調整してくれるACCなのだからうれしい限りだ。ただし、車種によって機能内容には違いがあるので、購入の際はしっかり確認しよう。わかりやすいように、各メーカーの最新車種のクルーズコントロール事情をまとめてみた。
ホンダ N-WGN
クルーズコントロール機能に関してはホンダの最新システムを搭載しているN-WGN。全車に標準装備(オプションとして非搭載仕様も設定)しているのがうれしい。全速度領域で作動し、停止保持機能まで付いているのだから機能的には最高水準だ。
参考までに、同社でも人気の「N-BOX」は1世代前のタイプで、全車に標準装備するものの渋滞時は非作動(速度が約30km/hまで落ちると作動が停止する)。完全停止時の停止保持機能も持たない。
スズキ ハスラー
ターボエンジン搭載車だけACCが標準装備されるハスラー。渋滞中も作動するが、停止保持まではおこなわれない。
現時点で、スズキは停止保持機能を持つACCを搭載しているモデルを用意していない。今後に期待したいところだ。
ダイハツ タント
かつて「ムーヴ」で軽自動車初のACCを搭載したダイハツ。昨年登場したタントからシステムを刷新し、全車速対応となっている。ただし、停止保持機能は非搭載。2020年6月10日に発売開始されたばかりの「タフト」からは停止保持機能も組み込まれている。
日産 ルークス/三菱 eKスペース
日産 ルークスは上級グレード(先進装備をパッケージ搭載するタイプ)に標準装備。三菱版のeKスペースとeKクロススペースは上級グレードへオプション設定としている。どちらも渋滞対応かつ停止保持機能付きと、機能的には最高水準だ。
一度使うと手放せないほど便利なACC
「渋滞対応」や「停止保持」などの機能は、自分がクルマを使う環境によってありがたみが変わってくる。
東京、大阪、名古屋など大都市に住んでいて都市高速まで含めた高速道路で渋滞に巻き込まれることが多いなら、それらはぜひ欲しい。日常的とはいわないまでも、週末の遠出などで高速道路の渋滞にはまるのであれば、一度使うと手放せないほど便利と感じるだろう。もちろん、停止保持まで付いているほうがより便利に感じるのはいうまでもない。
[筆者:工藤 貴宏]
※「最新車種別ACC比較」は2020年6月現在の状況です。
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