創業100年の老舗「づぼらや」閉店にみる 関西の“ある事情”

 大阪の老舗ふぐ料理店「づぼらや」が11日、閉店を決めた。新型コロナウイルスの感染拡大でミナミの道頓堀と新世界の2店舗を4月8日から臨時休業していたが営業再開は断念したという。

新世界「づぼらや」本店(緊急事態宣言発令中)

 大正9年(1920年)に創業し100年にわたり営業を続けてきたが、づぼらやの運営会社は閉店について「コロナだけではなく、経営上さまざまな理由があった」としている。以前から負債があり梅田店の閉鎖や駐車場などの不動産を売却するなどして経営改善を目指していたという。

■背景にインバウンドの消滅?

 づぼらやは店頭にかかる巨大なとらふぐの看板が名物として知られ、老舗ふぐ料理店として親しまれてきた。近年ではインバウンド(訪日外国人)でにぎわう関西では、黒門市場「浜藤」と並んで外国人から人気を集めていた。

 関西空港の2020年4月の国際線旅客数(※速報値)は前年同月比マイナス99.7%と激減。外国人観光客であふれ返っていた関西の観光地は一変している。

道頓堀「づぼらや」(緊急事態宣言発令中)

 関西で飲食業や観光施設などでインバウンドの受け入れ担当する責任者は口を揃えて「10月」「中国」をキーワードに挙げる。

「国慶節」だ。

 10月は中国の大型連休である「国慶節」がある。日本でいう建国記念日。例年多くの中国人観光客が訪日する。日本でもすでに政府がビジネスで訪日する外国人に対する規制の緩和を検討しているが諸外国でも夏の観光業再開に向け着々と準備が進められている。
「10月まで持ちこたえられたら光が見える。持たなければ、それまでのこと」。緊急事態宣言解除後の関西。かつてない厳しい夏を乗り越えなければならない。

■新世界のフォトスポット~風景まで変わるのか?『明日は我が身』

 づぼらやは新世界本店(大阪市浪速区)の3階部分から、高さ約3メートルの「とらふぐ提灯」がつり下げられ、通天閣をバックにした構図がおなじみだった。

 そのすぐ北側にそびえる「通天閣」を運営する通天閣観光・高井隆光社長はラジオ関西の取材に対し「近年は食のスタイルが変化して串カツの街とのイメージからふぐ離れでの売り上げ減少は否めません。そしてコロナの影響も多少あるとも思います。

通天閣観光・高井隆光社長

 創業100年の新世界の老舗が閉店しなくてはいけない現実に本当に『明日は我が身』という危機感は持っています。そして新世界の二枚看板(巨大フグ提灯と通天閣)でのフォトスポットが無くなると思うと残念でなりません。今後は今まで以上に通天閣の役割が新世界地域で益々重要になってくるでょう。気を引き締めてコロナ以前の新世界の復活へ向けて、残された地域の皆様と協力して頑張っていきたいと思っております」と話した。

運営会社は閉店についてすでに従業員に伝え、このまま臨時休業を続けたうえで閉店日は9月15日とする。運営会社は不動産業などで事業を継続するという。店頭の「とらふぐ提灯」や店舗の跡地活用などは未定。

© 株式会社ラジオ関西