学生団体インタビュー 休校中の若者へ「感情を隠さず、声をあげよう」(聞き手・NO YOUTH NO JAPAN)

こんにちは、NO YOUTH NO JAPANです!私たちは若い世代から参加型デモクラシーを根付かせるために、政治や社会について分かりやすく発信しています。
今回から始まる新連載では、日本で活動している学生団体を紹介します。インタビューを通じて、活動に込められた思いや社会へのメッセージを取り上げていきます。
今回は、学費減額のために活動している 一律学費半額を求めるアクション に注目しました。一律学費半額を求めるアクションとは、国による一律学費半額と高等教育への給付を求める署名運動です。4月24日から活動していて、現在(記事執筆時点)はおよそ17,500人以上が賛同しています。
今回は、署名運動の代表・山岸鞠香さんのお話を聞かせていただきました。

山岸鞠香(やまぎし まりか)
1993年生まれ。神奈川県出身。Change Academia 発行人代表。Ecole Polytechnique 大学院博士課程2年数学専攻。フランスで大学院に入学し、帰国後日本のアカデミアの構造の異様さが無視できなくなり、2019年5月頃から意見発信を開始。Change Academia では、大学院生として自身のテーマの数学研究を行う傍ら、団体代表として、言論活動や公教育への問題意識向上のために活動をしている。

一律半額を求めるアクションを通して、人と人を繋げる

NO YOUTH NO JAPAN 和倉(以下、和倉):署名運動を始めようと思ったきっかけは何ですか?
一律学費半額を求めるアクション 代表 山岸さん(以下、山岸):コロナウィルスで臨時休校になっていたことにも関わらず、 説明なしで、学費を満額で請求されたことですね。それに反応して、4月15~16日に各大学の学費減額署名運動がポツポツと立ち上がり始めました。私が一年前にChange Academiaを始めた頃、 バッシングがひどくて、活動をやめてしまう人が多かったです。その頃のように、やめてしまう人がいると勿体ないと思い、 各大学で署名運動を行なっている人を繋げる場所を作ろう と思いました。

和倉:「一律学費半額を求めるアクション」ではどのような活動をしていますか?
山岸:各大学の学費問題において、 Zoomで1日3回おしゃべり会 を行い、署名活動についてのノウハウを交換 しています。署名はどの機能を使って作るべきか、誰に提出すればいいか、などを相談する場です。

和倉:活動は、何人くらいで行なっていますか?
山岸:最初は6人で、ラインのグループチャットで連絡を取っていました。3~4日経つと、
20人くらいに増えて、現在はおよそ 145人( 大学数は約〜 ) です。

NO YOUTH NO JAPAN 能條(以下、能條):145人!たくさんの方が参加しているんです
ね。メンバーの男女比率は、どのような様子ですか?
山岸: 女性が多い です。最初は、ほとんど女性でした。中でも、署名運動を始めた時に、
「難しいけど、やるべき!」という正義感に溢れていた人が多かったです。

活動していく上での壁

和倉:活動については、周囲の人からどのような反応がありましたか?
山岸:活動始めたときは、正直周囲からは 期待されていなかった ですね。4月18日に、ツイッターで #covid19学費問題 を使い始めたのですが、ハッシュタグには「減額」は含めませんでした。まだその頃は、「減額」への周囲の態度が冷たくて、「理想だけど、無理だろう」と考える人が多かったからです。
でも、2週間くらい経つと 段々とこの雰囲気が変わってきて 、「学費の1割くらい、減額しても当然だよね」という考え方が広まってきました。一律学費半額を求めるアクションを始めたのもその頃です。そう見ると、この署名運動は、 将来を見据えたチャレンジ でしたね。
 
能條:確かに、大きなチャレンジですね。ところで、署名を政治家に提出するには、どのようなきっかけがありましたか?
山岸:知り合いの野党系の議員の方に繋いでいただきました。結構急で、あまり準備ができなかったです(笑)前日に会えることが分かりました。

和倉:会った時はどのような気持ちでしたか?
山岸:会えたのはもちろん、嬉しかったですね。でも、政治家の方は、言質を取られると困る様子で、守りに入っていた様子です。授業のオンライン化の話をしても、「まあ頑張っていきたいよね」という反応しか返ってこなくて、 話が噛み合わないという印象を受けまし
た 。

和倉:今は、コロナウイルスについて不満や批判の声が多いですが、山岸さんのように、その不満を行動に移すためのアドバイスはありますか?
山岸:批判に立ち向かうことですね。私は、署名運動を始めた頃、心無い批判を色々受けていて、中には「髪染めてるお金があれば学費を払え」という人もいました(笑)でも、大切なのは、「 クソリプはクソだ 」ときちんと自分で判断して、割り切ること。
また、「寛容のパラドックス(※)」を許さないこと。#metoo流行時、多様性を重視している中で、「女性差別も一つの選択肢」という声がありました。このような、多様性を殺してしまう意見を1つの意見として容認しないことに気をつけないといけないと思います。この2つは覚えておくといい「武器」になります。
(※寛容のパラドックスー「もし社会が無限に寛容であるならば、その寛容は最終的には不寛容な人に奪われる」という考え)

Change Academiaとは?9月入学も…

和倉:この署名運動を始める前は、Change Academiaという団体の代表と活動していらっしゃったのですね。
山岸:はい。Change Academia では、減額の活動はしていませんでした。研究者などになるには、博士号を取る必要があるのですが、最低でも9年間大学に通う必要があります。9年間の借金や学生ローンを持つことで、 経済的な格差 が生まれます。また、ポスドク期間(※)も、アルバイトよりひどい状況で働かないと、ローンを払い戻せません。つまり、残れるのは経済的に豊かな人だけです。このような人を少しだけでも援助したい、と思い、活動を始めました。
(※)ポスドク(ポストドクター)期間=博士号を取得して、正規職になるまでの期間

NO YOUTH NO JAPAN 田中: 休校が続く中、「9月入学に入学時期を変えたほうがいい」という意見がありますが、山岸さんはその意見をどう思いますか?
山岸:これはあくまでも私の個人的な意見ですが、 9月入学には反対 です。今、コロナで混乱している中でやるべきことなのかな?と思います。
賛成派の意見では、「グローバル化に繋がる」と言っている人がいます。私はそもそも、ギャップイヤーを埋めようとする日本の考え方に疑問を投げかけたいです。ギャップイヤーがなかったら、やりたいことを見つけられない。しかも、今はコロナだから留学できない。

学費だけが問題ではない

和倉:最後に、学生へのメッセージをお願いします。
山岸:ニュースでは、休校について、学生の貧困や入試についてしか取り上げられてないですね。 でも学校は、授業だけではなく、部活で活動したり、友達と会う場所でもある。 それを失った学生は本当に苦しんでいると思います。このことを心に留めて、休校の困難につい
て発信するときは、 感情を隠さず、精神的な面にも注目 してほしいと思っています。

自分の意見が何かを変える

批判に立ち向かい、一律学費半額を求めて活動する山岸さんの姿は、とても格好良かったです。自分も意見を正直に発言するだけで、何かが変わるかもしれない。このような考え方を持つ人が増えると、社会によりいい変化が現れそうです。
NO YOUTH NO JAPANでは、これからも様々な入り口から政治と若者をつなげていく活動をしていきます。

(文=和倉 莉央)

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(本記事の内容は筆者の見解です。)

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