小学生がライブハウスに大集合!今聴くとホロ苦い BAKU の青春ソング 1991年 2月1日 BAKU のシングル「ぞうきん」がリリースされた日

時代はバンドブーム! 小学生女子に大人気だったBAKU

1991年と言えば、バンドブーム真っ最中の時期であり、X-JAPAN(当時はX)や、LINDBERG、JUN SKY WALKER(S)、UNICORN といったバンドが次々とヒットを飛ばしていた。

また、滅多にTVに出ないソロアーティストたちも大人気で、なかでも ZARD のデビューはこの1991年だ。そして、アイドルシーンでは、観月ありさや SMAP が歌手デビューする中で、光GENJI や森高千里、工藤静香、中山美穂、小泉今日子らが奮闘。

その他のエンタメを見渡してみても、映画『ゴッドファーザー PARTⅢ』『就職戦線異常なし』『ゴジラVSキングギドラ』などの人気作品が公開され、ゲームセンターを覗いてみれば『ストリートファイターⅡ』が稼働し対戦型格闘ゲームが人気を集めるようになった。テレビ番組では、『ダウンタウンのごっつええ感じ』が12月にレギュラー番組としてスタートするなど、多岐にわたって多様なコンテンツが揃っていた。

そんな1991年という年の2月、BAKU のシングル「ぞうきん」が発売された。皆さんは覚えているだろうか? BAKU というバンドを。そう、とにかく小中学生の女子に人気があったバンドだ。それは私も間近で見ている。その光景は忘れたくても忘れられない。

いわゆる “ホコ天バンド” 田舎のライブハウスも超満員!

彼ら BAKU は元々、いわゆる “ホコ天バンド” で、インディーズ時代はまだ高校生だったが、高校卒業後にメジャーデビューを果たす。そして、シングル「ぞうきん」でヒットを飛ばし一躍人気バンドに躍り出るのだ。

この曲は、いわゆる擬人化ソングで、雑巾の気持ちを歌詞に込めたわけだ。そして、「♪ ぼくの体は牛乳くさい」だの、「♪ ふんだりけったりしないで」だのと歌う。

確かに当時の雑巾は牛乳くさかったし、なかには縫い針が雑巾に刺さったままで、指に刺して泣いた友達もいた…。たかが雑巾。だけど、雑巾にだってドラマがあるのだ。だから、笑ってはいけないのだ。ほんとに。

そういえば、当時の小中学校って、「お母さんに雑巾を作ってもらって1人3枚持ってきてください」みたいな指示が学校からあったような覚えがある。これ、今にして思い返すとシングルマザーのことを考えていたのかなと、気になっちゃいますね。いやまてよ、雑巾は近所のスーパーとか文房具屋で売っていたな。…って、いかんいかん、脱線したか。

さて、BAKU はこの「ぞうきん」でインディーズ時代以上の売れっ子になった。そして、この曲が収録されたアルバム『聞こえる ~Power of Dreams~』のツアーは田舎のライブハウスでも超満員だった。が、そこには、今思い返しても信じられない光景が! それが、小学生が7割、中学生1割、その親が付き添いで2割… みたいな状態だったのだ!! 私はこの時期の彼らのライブを田舎で観ているのだから間違いない!

北陸の田舎のライブハウスなのに、満員だが後ろには母親ばかり。その光景を想像してほしい。親に見守られるロックって…。いやいや、ディスってるわけではないんです。むしろその逆。

今聴くとホロ苦い牛乳の味? BAKU の青春ソング「ぞうきん」

当時私は思春期真っ只中で、パンクやメタルやノイズばかり聴いてた。だから逆にかなりの衝撃を受けたわけで。でも。だからこそ、BAKU は凄いバンドだったのではないか? とも思うんです。だって、曲は良いし、歌詞も面白い。これなら親子で一緒に存分に楽しめる。目の前の光景を見れば、それは十分に理解できた。

ところが、BAKU にも “自分達の成長” があるわけで…。大人にバカにされたくないから大人向けバンドになろうとして事務所やレコード会社と衝突することに…。

彼らのその気持ち、よくわかります。バンドも聴き手も皆大人になっていく。大人を斜に見てたのに、その自分が大人になっていく。そんな葛藤を抱えながら…。BAKU もそんな哀しいバンドのひとつで、1992年に解散することになる。当時少年少女だった今の大人達も、今「ぞうきん」を聴けばホロ苦い牛乳の味を思い出すかと。

カタリベ: 鳥居淳吉

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