「下位打線と呼ぶのはやめてくれる?」 西武山賊打線の“控え組”が急成長

西武・川越誠司【写真:宮脇広久】

川越、鈴木、呉らが若手たちが絶好調

「ハァ~、今日もまたすごい試合だったな……」

西武の辻発彦監督は12日に行われたロッテとの練習試合終了後、記者会見の冒頭に深いため息を漏らした。16安打9得点で、12安打6得点の相手に圧勝。前日の11日も16安打12得点で、18安打8得点の楽天を降していたのだ。リーグ連覇を果たした昨年も一昨年も、チーム打率はリーグトップ、チーム防御率はリーグワーストで、その傾向が象徴的に表れた格好だ。

投手陣には不安いっぱいの辻監督だが、打線の話になると当然言葉が弾む。「打撃陣はまずまず。そんなに心配しなくていいのかなと思います」と余裕を見せる。

主砲の山川が相手投手の失投を確実にオーバーフェンスする精度の高さを見せれば、打撃不振にあえいでいた森もここ2試合で急上昇。さらに“脇役”たちの打棒が凄まじい。投手から外野手に転向し2年目の川越誠司は3試合連続でフル出場し、4回にはロッテの開幕投手である石川から右中間へ2ランを放った。9日の楽天戦でも1発を放った一方で、11日は5打数1安打4三振。粗削りだが、「三振でもいいからフルスイングしようと思って打席に入りました」と屈託がない。

辻監督は「試合に出続けていれば、ボールの見極めが良くなってくる。たまに出場して、いきなり打ちなさいと言われていては、ホームランが出る一方で三振が増えるのもしかたがないが、こうやって1試合任せれば、慣れがプラスになり技術も上がってくる」と高く評価した。

秋山が抜けた穴を全員でカバー、若手の成長と新助っ人の活躍があればお釣りも…

22歳の鈴木将平外野手も成長著しい。11日に5打数3安打2打点の活躍で、指揮官を「スイングが鋭くなった。課題もまだまだあるが、レギュラー陣に何かあったら必ず先発でいかなきゃいけないところまで成長してきている。(レギュラーの)木村や金子が調子を落とせば、わからない。そういう意味で刺激を与えている。競争意識を持ってやってくれればいい」と喜ばせた。

5年目の呉念庭(ウー・ネンティン)内野手も打撃好調で、辻監督は「ネンティンもいいのよ。今年パワーアップしたみたいで、もし源田に何かあったら、(先発の)ショートでいくというくらい」と評する。

昨季まで不動のリードオフマンだった秋山翔吾外野手がメジャーへ移籍して抜けた穴は、1人では埋められなくても、こうした若手の成長と新外国人スパンジェンバーグの活躍があれば、お釣りが来そうだ。

西武が誇る“山賊打線”は、レギュラーと控えの差が激しいとみられていたが、ここにきて様相が変わってきた。スパンジェンバーグ、金子、木村が並ぶ外野陣の背後に川越、鈴木が控え、遊撃手で主将の源田のバックアップは呉。指名打者はもともと左の栗山、右のメヒアのツープラトンだ。打撃陣に関しては、2チーム作れそうな戦力が整いつつある。

「ウチの場合、下位打線と呼ぶのはやめてくれる? ウチでは“下位”という表現はしないから」というのは最近、8番を打つスパンジェンバーグ、9番の木村らの打撃好調をうけて辻監督が口にした名言だが、そのうち「“控え”と呼ぶのもやめてくれる?」と言い出す日も近いかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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