「魔法のように消えた」西海市で行方不明の89歳女性 同居の長男、帰り待ちわび1年

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2019年5月から行方が分からなくなっている田川タケさん(田川義久さん提供)

 2019年5月、当時89歳だった長崎県西海市西彼町の田川タケさんは、自宅からこつぜんと姿を消した。当初は警察などが捜索したが、1年以上がたった今、何の手掛かりも得られていない。同居する長男の義久さん(70)は母親の行方を捜し、落ち着かない日々を過ごしている。県警に毎年800件程度の届け出がある行方不明者。帰りを待ちわびる家族の思いを聞いた。

 料理やケーキを前に両手でピースサインをつくり、満面の笑みを浮かべている。写真は3年前のタケさんの誕生日に撮られた1枚だ。
 義久さんは父親の長一さんが06年に84歳で亡くなって以降、タケさんと2人暮らしだった。「冗談を言っていた母がいないと、毎日の食事もむなしい」と打ち明ける。タケさんが「魔法のように消えた」(義久さん)のは、19年5月6日のことだった。
 その日、義久さんは佐世保市内の葬儀に出席するため、午前9時半ごろ1人で家を出た。帰宅したのは午後4時すぎ。家の中にタケさんの姿はなく、昼食に用意したカレーライスにも手を付けていなかった。
 午後1時半ごろ、近所の人が自宅前の石垣に座っているのを目撃していたのを最後に足取りは途絶えた。タケさんは足が不自由で、遠くまでは行っていないと思い、付近を捜したが見つからなかった。午後7時すぎ、警察に捜索願を出した。
 自宅は山あいにあり、集落には川も流れている。西海署や地元消防団は周辺を捜索。住民への聞き込みや付近の店舗の防犯カメラも確認し、警察犬も投入された。しかし、何も手掛かりは見つからなかった。
 県警人身安全対策課によると、19年の行方不明者の届け出件数は785件。年代別にみると、65歳以上が163件、未成年は127件。働き盛りの世代(20歳以上40歳未満)も308件ある。
 このうち19年中に解決に至らなかったのは179件に上る。年をまたいで発見される人もいるが、長年にわたり行方が分からないケースもあるという。
 遠くまで歩いて行くことは困難で、履いていたとみられるサンダルすら見つかっていない。義久さんは事件に巻き込まれた可能性も疑う。しかし、西海署はこれまでの捜索で「事件や交通事故をうかがわせる物証などはなかった」と判断している。
 義久さん自身も手探りで捜索を続けた。しかし、「捜す手掛かりすらない。これだけ捜しても見つからないなんて…」と肩を落とす。やりきれない思いを胸に抱えながら、今日もタケさんの帰りを待っている。
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 行方不明当時のタケさんは、ベージュのかっぽう着に紫色のもんぺ姿。ピンク色のクロックス製のサンダルを履いていたとみられる。情報提供は同署(電0959.22.0110)まで。

田川タケさんの自宅がある集落=西海市西彼町