じわり増加…サウナ女子 人気高まる“熱い”理由 「整う」感覚、愛好家に浸透

「整う」感覚を求めて女性がはまるサウナ(写真はイメージ)

 サウナにはまっている女性が長崎県内でもじんわりと増えている。90度前後の温室に身を置き、汗がしたたり落ちるまで我慢する行為の何が女性たちを引きつけるのか。美容? それとも健康? 調べてみると、熱中するのには科学的な理由もあるようだ。
 魅力を熱く語るのは、サウナにはまり約3年のポンさん(37)=ハンドルネーム、県内在住=。多い時は週3、4回通い、サウナを目的に東京や京都、名古屋にも出掛ける愛好家だ。ポンさんにとってサウナは「何にも考えなくていい時間」。目や耳から常に入ってくる情報を遮断する空間とも感じており、無我の境地へといざなうという。
 ポンさんの楽しみ方は、サウナ10分前後→水風呂約1分→休憩を1セットとし、体調に合わせて数セット繰り返す。すると体が芯まで温まり、力を抜いて水風呂に入ると次第に不思議な感覚が体を包む。冷やしているのに熱を取り戻すような感覚。ゆったりとした時間の中で筋肉の緊張状態が緩み、聞こえていた音が遠のいていく瞬間がたまらないという。

 「サウナの良さを知らないのは、人生損していますよ。サウナを通じて知り合いが増えました」と笑う。県内でも屋外でテント型サウナを楽しむイベントなどが企画されている。サウナ好きの共通項でつながり、一気に距離が縮まっていくのを感じている。
 そうは言っても、水風呂に抵抗がある人も少なくない。ポンさんは「まずは10秒、我慢してみて。つらさの先に必ず“幸せ”があります」。一度でも良さを味わうと、体がその快感を欲するようになるそうだ。
 日本サウナ・温冷浴総合研究所(日本サウナ総研)の調査によると、20代、30代の女性のそれぞれ約3割が定期的にサウナを利用しているという。
 県内でも女性をターゲットに集客する施設が出てきている。男性専用サウナがある佐世保市のカプセルホテルサウナサンは、要望を受け、女性に開放するイベントを企画。コロナ禍で実施は延期したが、会員制交流サイト(SNS)で告知すると反響が大きかったという。実際、SNSで「#サウナ女子」「#サウナ女子会」などの投稿も多く、人気が出ていることがうかがえる。
 サウナ熱が高まっている要素の一つが、多幸感に満たされた状態になる「整う」という感覚。愛好家の間で浸透している言葉だ。
 著書「医者が教えるサウナの教科書」を出版した日本サウナ学会の加藤容崇(やすたか)代表によると、活動時に働く「交感神経」と休息時に作用する「副交感神経」が切り替わらずに共存すると「整った」と感じるという。

 水風呂を出た後の休憩中は、副交感神経が優位になる一方、サウナと水風呂の影響で交感神経のアドレナリンが残る。この時、「脳科学的には深くリラックスした状態になるのに、感覚が研ぎ澄まされ、頭がスッキリ感じる」。ポンさんがサウナにはまる理由もこの「整う」感覚にある。
 整いやすさは男女で差があるのか。加藤代表は「女性の方が整いやすい」と言う。アドレナリンなど血中のホルモン値の変動に敏感に反応しやすいためで「サウナにはまる女性が多いのは必然だ」と話す。
 コロナ禍で営業を控えていた施設も徐々に再開しているこのごろ。あなたも「整う」体験をしてみては。

 


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