『終わりなき〈いくさ〉~沖縄戦を心に刻む』 住民視点で考えた軌跡

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 著者は毎日新聞大阪本社社会部部長、同編集局長を歴任し退任後の2016年に自らの課題を見つめ直すため沖縄に居を移した。また琉球新報客員編集委員として現在も続くコラム「おきなわ巡考記」を執筆。本書ではそのコラムを核に据え、著者がこの4年間に足でとらえた沖縄をテーマごとに3章に分類し考察する。
 書名が示すように「集団自決(強制集団死)」や「艦砲ぬ喰(く)ぇー残(ぬく)さー」のように生き残った人びと、離島苦、27年間の米軍政府統治下、今なお続く基地問題など、沖縄は戦後もまた終わりなき戦場(いくさば)である。著者は現場で当事者の声に真摯(しんし)に耳を傾けながら、この体験を何のためにどう継承するのか、を自らに問い続ける。
 「Iこれまで―記憶の断面」では、具体的な例をあげて戦争の記憶を継承する人びとが紹介されている。ハルさんは、顔に残る傷や根元から失われた左手の二本の指など凄絶(そうぜつ)な戦争の跡が身体に刻まれているが、その体験は臨床心理士の吉川麻衣子さんに出会うまで誰にも話さず生きてきた。その孤独と沈黙の60年。心から信頼する人に語り終えた翌年、息を引き取った。
 「IIいま―鮮明にする立ち位置」を貫くのは、戦前戦中に戦意高揚に加担し「手を下さずに」住民を死に追いやった新聞人の負の歴史を忘れず、沖縄の記者とともに「戦のためにペンを執らない」と誓う「住民視点と自省」だ。続く「IIIこれから―抗い、つながり、歩く…」では、高江、辺野古でのむき出しの国家暴力に対し、決して諦めない抵抗の根幹である沖縄戦の記憶の現場を、途中病に倒れながらも著者は幾度も歩き、覆い隠される暴力を記者の五感で鋭敏に捉え書き続ける。
 テーマは重厚だが、柔軟な表現で記憶と現場をリレーのようにつなぎ、一気にエピローグまで読者を誘(いざな)う。読後は著者が辿(たど)った現場を訪ねてみたくなるだろう。私も本書で紹介された「西原の塔」を初めて訪ね感銘を受けた。巻末の「沖縄戦後史略年表」もありがたい。終わらない戦(いくさ)75年を数えるこの年に、ぜひ読んでいただきたい一冊である。
(上間かな恵・佐喜眞美術館学芸員)
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 ふじわら・けん 1950年岡山県生まれ。琉球新報客員編集委員。毎日新聞大阪本社社会部長、編集局長などを歴任。18年に沖大大学院修士課程修了。『魂(マブイ)の新聞』で現代沖縄研究奨励賞受賞。
終わりなき<いくさ>~沖縄戦を心に刻む 藤原健 著
A5判 208頁

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