大学入試、2020年度の傾向と2021年度予測 センター利用や2期入試で倍率低下 受験生動向に変化も

今春2020年度入試は、難関私立大の志願者数減少や受験生の手堅い受験行動が話題となりました。現在、各入試情報サイトでは個別大学の入試結果に加えて全体集計も公表されています。これらの集計結果からは今春入試の全体的な傾向が見えてきます。国公立大はセンター試験の平均点ダウンの影響などで志願者数、倍率が共に前年よりも低下しました。また、私立大も志願者数、倍率が低下していますが、中でもセンター試験を利用した入試方式と2期入試は著しい低下です。こうした一般選抜の状況とは異なり、総合型選抜(AO入試)の志願者数は国公立大、私立大ともに前年比10%以上も増加しています。これらの入試結果概況から次年度(2021)入試の受験生動向について考えます。

英語・数学の影響でセンター試験平均点がダウン、国公立大志願者数は減少

今春の入試結果について、河合塾の入試情報サイトKei-net(

https://www.keinet.ne.jp/

)を見ると、個別大学の入試結果に加えて、国公立大と私立大の一般選抜結果の全体集計が掲載されています。国公立大は前期・中期・後期日程全体の志願者数が前年より約3万人減少していますが、全体の合格者数は前年並みですので、全体として倍率は低下しています。もともと大学入試センター試験の出願者・受験者が約3万人減少していましたので、志願者数の減少にはその影響もあったでしょう。また、今回のセンター試験は英語と数学で平均点がダウンしましたので、思うような得点が取れなかった受験生が出願を控えたことも影響したと言えるでしょう。

また、難関10大学の集計を見ると東京大、京都大、大阪大の前期日程の志願者数は、ほぼ前年並みとなっており、センター試験平均点ダウンの影響は見られません。東北大、東京工業大の前期日程の志願者数は約1割の減少となっていますが、東北大は合格者数も減少しているため、倍率はほとんど前年と変わりません。ただ、東京工業大は前年並みの合格者数のため倍率は低下しています。しかし、倍率が低下したとは言え、それでも倍率は4倍ですので、入試が易しくなったとは言えないでしょう。この他、学部系統別の集計を見ると、前期日程で志願者数の減少が大きな学系は「社会・国際」、「教育-総合科学課程」、「医、歯、薬、看護」となっています。一方で「工」、「医療技術」、「芸術・スポーツ科学」の人気は底堅く、「総合・環境・人間・情報」は前年よりも志願者数が増加しています。

国公立大入試結果

https://www.keinet.ne.jp/exam/past/pdf/20k_zentai.pdf

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私立大志願者数は2007年以降で初めての前年割れ、合格者数は増加で倍率は低下

私立大全体の入試結果集計を見ると、志願者数は前年よりも減少しています。出願が始まった時期には、都市部の難関大の志願者数減少が話題になりましたが、全体集計を見てみると当初の予想よりも減少幅は小さくなりました(前年比97%)。それでも延べ志願者数にして10万人以上の減少ですので、影響としては小さくはありません。志願者数の減少傾向に対して、全体の合格者数は7万人以上増加していますので、私立大全体の倍率は低下しています。

地域別に入試結果を見ると、「首都圏」、「近畿」、「四国」の各地区では志願者数が前年割れとなっていますが、それ以外の地域では全て前年よりも増えています。「東海」地区は微増ですが、「北陸」、「中国」地区では前年比で10%以上の増加率となっています。これらの地区では地元の私立大への進学を希望した受験生が多かったものと考えられます。そのため、私立大全体の志願者数が減少しているのは、主に首都圏や近畿圏の都市部私立大の志願者数減少が影響していると言えます。首都圏、近畿圏では合格者数が2万人~3万人以上も増えていますので、地区全体の倍率も低下しています。こうしたことから2016年頃から始まった定員管理の厳格化による、合格者数の減少・倍率アップ・入試難易度アップの傾向がほぼ収まりつつあると考えて良いでしょう。

この他、学部系統別の集計を見ると、志願者数の減少率が大きい学系は「社会・国際」、「法・政治」、「歯、薬」、「総合・環境・人間・情報」となっています。なお、これらの学系ほどの減少率ではありませんが、「生活科学」は志願者数の減少傾向が続いており、全体の倍率も2.4倍まで低下しています。当該系統はほぼ女子大で占められていますので、学生募集の中心的役割は学校推薦型選抜であるとは言えども、一般選抜での落ち込みは気になるところです。一方で「理」、「工」、「農」、「医療技術」、「芸術・スポーツ科学」は前年よりも志願者数が増加しています。下線の学部系統は、国公立大の傾向と一致する学系ですので、受験生全体の動きや志向を表していると言えます。

私立大入試結果

https://www.keinet.ne.jp/exam/past/pdf/20s_zentai.pdf

→次ページ入試方式別の集計で見る今年の傾向

センター利用入試と2期入試が低調、前年より志願者数が半減近い大学も

私立大入試結果を入試方式別の集計で見ると、今年の傾向がよく読み取れます。全体の志願者数は前述のように前年よりもマイナスですが、一般方式は微増しています。逆に大きく減少しているのはセンター利用入試(センター方式)です。全ての入試方式の志願者数が延べ10万人の減少となっていますが、センター方式は約13万人減少しています。大学別入試結果を見ると、センター方式の志願者数が前年から見て半減近い大学もあります。首都圏では、大妻女子大、共立女子大、駒澤大、実践女子大、津田塾大、東京女子大、東洋大、日本女子大、明治学院大、立正大、フェリス女学院大などのセンター方式の志願者数の減少が目立ちます。近畿圏では摂南大、阪南大が3割近く減少していますが、首都圏で見られるような半減近い現象となる大学はほとんど見られません。

また、2期入試はここ数年、1期入試の合格者数の減少による再チャレンジの機会として志願者数が増加してきましたが、今週入試では一転して志願者数が減少しました。しかし、合格者数は2割増加しているため倍率は低下しています。ここ数年、各私立大が定員管理を厳格に行うために1期入試での合格者数を少なめに発表し、手続き状況によって不足分を2期入試で補完するという現象が見られました。2期入試は合格者総数の調整機能を果たしてきたのです。しかし、それも2期入試で十分な志願者数があるからこそできる方法です。今回見られた2期入試の志願者数減少は、今後は2期入試まで残る受験生数が限られてくる事を示唆する兆候かも知れません。

私立大 大学別入試結果

https://www.keinet.ne.jp/exam/past/pdf/20s_daigaku.pdf

AO入試と推薦入試の志願者数は増加、来年は0(ゼロ)期入試化の様相も

前節で見たように私立大のセンター方式、2期入試では志願者数が大きく減っています。人口減少により大学志願者数が減っていますので、やむを得ないのかも知れませんが、受験生がセンター方式と2期入試以外の入試に流れている可能性も考えられます。旺文社教育情報センターのサイト(http://eic.obunsha.co.jp/)には「2020年度 推薦・AO入試結果速報」が掲載されていますが、これを見ると国公立大でセンター試験を課さない推薦入試の志願者数は前年よりも増加しています。また、私立大の公募推薦入試は志願者数が前年並みですが合格者数は1割以上増加しています。私立大の指定校推薦の入試結果は掲載されていませんが、恐らく志願者数・合格者数は増加していると思われます。つまり、この時点ですでに一般選抜を受験する大学志願者が一定数減少していたことになります。さらにAO入試の入試結果を見ると、国公立大でセンター試験を課さないAO入試と私立大のAO入試は共に志願者数が1割以上も増加しています(国公立大は合格者数も1割以上増加しています)。

これらの動向から、受験生はこれまでに見られたような一般選抜の中でセンター方式などを併願して、手堅く受験する方法よりも、総合型選抜(AO入試)、学校推薦型選抜(推薦入試)を受験機会として活用していると見ることもできます。もともと近畿圏では、私立大学の公募制推薦を0(ゼロ)期入試として捉えている受験生が少なくはありません。今後はそれが全国的にも見られるようになるかも知れません。

2020年度 推薦・AO入試結果速報

http://eic.obunsha.co.jp/analysis/202004_02/?sp=kyoin&_ga=2.203175441.1053796005.1591243336-1129369201.1584754197

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