アベノミクスの行く末は

 調べてみたら、7年前のちょうど今頃、安倍政権の経済政策、アベノミクスの「3本の矢」のうちの「成長戦略」が示された。耳目を集めた政策はいま「アベノマスク」と皮肉交じりに、もじられる▲税金の無駄遣いだ、配るのが遅すぎる、と皮肉には怒りや失望も含まれている。回収箱を置いて、マスクを施設などに渡す動きもあるが、政府には思いも寄らないことだろう▲アベノミクスがアベノマスクへ。政策が別物に変わってしまったが、同じようなことがまだある。「経済成長することで財政も立て直す」という戦略は「絵に描いた餅」に一変した▲コロナ危機に伴い、32兆円に迫る第2次補正予算が成立した。当初予算などを合わせた財源をどうするかといえば、半分以上は借金、つまり国債を発行して賄うという。新たな借金は90兆円余りで過去最高-といってもピンとこないが、財政再建どころでないことは分かる▲危機を乗り越えるためだ、仕方ない。そう思えたらいいのだが、10兆円もの予備費は大まかな使い道を示したにすぎず、給付金の巨額の事業委託費には疑問符がぶら下がる。「仕方ない」とはどうも言えない▲長期政権はここに来て、成長戦略を見失い、仕切り直しを求められる。アベノミクスの行方が注目された頃がやけに遠く思えてくる。(徹)

 


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