『なぜ君は総理大臣になれないのか』「誠実さ」はこの国の政治家に不用なのか?

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 2019年2月、衆議院予算委員会で厚生労働省の不正統計調査問題をめぐって、調べ尽くした統計を基にアベノミクスに有利な結果が出るように圧力をかけたのではないかと整然と、そして目に強い怒りを溜めて質問した議員がいました。この熱のこもった質疑の動画は瞬く間に人々の関心を集め、SNSで、「統計王子」「こんな政治家がいたのか」と注目を集めました。彼の名前は、小川淳也。このドキュメンタリーは、2003年に彼が32歳で初めて出馬したときから現在までの17年間を追いかけた作品です。

 理想に燃え、マイクも持たずに「社会を良くしたい」と目を輝かせながら支持者に語りかけていた彼は、17年の政治人生で多くの挫折を味わうことになり、私たちはドキュメンタリーの中で彼が辿ってきた政治家としての苦悩を知ります。どんなに揺るがない強い信念を持っていたとしても、日本の政治に根深く残る世襲制度や、組織風土がもたらす党内派閥、野党の離合集散、という、こちらから見ればどうでもいいことに翻弄されて時が過ぎていく。この人は一体、いつになったら政治の世界で活躍しだしてくれるんだろうかと観ているこちらはやきもきさせられる。でもふと気づくのは彼がこんな言葉を語った時だ。「自分たちが選んだ政治家をバカだと笑っているうちは、この国は絶対に変わらない」。この言葉はすごく強くて、今も私の心に残っています。でもまだきっと遅くない。もしかしたら誠実な小川が、総理大臣になれる国をもう一度作っていけるかもしれない。だからこそ、私たち国民一人一人が政治を考えなければいけないと改めて考えさせられました。この作品は、1週間公開が早まり、そして本編の長さが3分間増えました。その3分間は、コロナ禍の中で日本の未来を問いかける内容となっています。(森田真帆)★★★★★

監督:大島新

出演:小川淳也

全国順次公開中

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