ウーバー宅配「猛スピードで怖い」と苦情 コロナで急増、都内で死亡事故も 警察が安全指導

京都府警東山署員から交通ルールの指導を受けるウーバーイーツの配達員(5月15日、京都市東山区)

 新型コロナウイルスの影響で食事宅配サービス「ウーバーイーツ」の需要が伸びる中、配達員の自転車やバイクが絡む事故への懸念が高まっている。東京都内では配達員が車に衝突して死亡したほか、京都市内では「猛スピードで走行して怖い」などと住民から苦情が上がる。ウーバー社は配達員と雇用関係を結んでおらず、安全運転の指導が不足していることが背景にありそうだ。

 5月中旬、京都市下京区の四条河原町。夕方になると「Uber Eats」と書かれたリュックを背負った若い配達員が盛んに自転車で行き来していた。赤信号を無視したり、自転車走行禁止の区域で下車しない人の姿も見られた。
 配達員をしている中京区のアルバイト女性(23)は「スマートフォンの地図を見ながら走る人も多い。正直、危ないと感じる」と打ち明ける。
 日本の運営法人「ウーバーイーツジャパン」(東京都)によると、外出自粛が広がり、契約する飲食店数はコロナ禍の前と比較して3割増え、全国で2万店を超えた。配達員の数は非公表だが、不況下で手軽な副業として始める人が多いとみられる。
 その半面、4月には東京都内で軽乗用車と衝突した20代の男性配達員が死亡。首都高速道路を自転車で走る危険な交通ルール違反もあった。京都府警によると、6月上旬に中京区内で配達員が絡む自転車同士の接触事故があった。「交差点を斜め横断して危ない」「車を運転中に接触しそうになった」などの苦情も寄せられているという。
 道交法は営業車を一定数保有する企業に対して「安全運転管理者」を選任し、社員教育するよう求めているが、府警によると、ウーバー社にはこの法的義務が適用されないという。同社は配達員を「パートナー」と位置付け、個人事業主に業務委託する形態を取っているためだ。
 4月から配達員を始めた左京区の男子大学生(21)は「コロナの影響でウーバーの事務所が閉鎖され、ネットで登録手続きをした。交通マナーは、交差点での安全確認など一般的な注意点がメールで届いただけ」と明かす。
 府警は今後もウーバーの配達員が増えるとみて、対策に乗り出した。先月15日には、東山区の四条通で自転車通行禁止のルールを守るよう取り締まりを実施。ウーバー社の担当者と協議を始めており、府警交通安全教育センターの滝清基(たきすみはじむ)所長補佐は「同社と連携しながら、配達員向けの交通安全教室や事故の多発地点情報のメール配信などを進めたい」と話す。
 ウーバー社は「警察の協力を仰ぎながら、配達員の交通安全の強化に取り組んでいく」としている。

 ■ウーバーイーツ

 米配車大手ウーバー・テクノロジーズが手掛ける料理配達サービス。日本では2016年に東京都で始まり、18年7月に京都府に参入した。京都での配達エリアは京都市や長岡京市、宇治市など。スマートフォンの専用アプリを使い、登録している飲食店の料理を注文すると、配達員が自宅や会社まで届けてくれる仕組み。

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