傑作『女帝 小池百合子』効果もどこふく風 なぜ都知事は「余裕」でいられるのか――?

今回は「東京大改革2.0」という分かりにくい公約。

近年、本が売れない中ノンフィクションでは特筆すべき売上げを記録している作品が注目されています。『女帝 小池百合子』(石井妙子著)。売り上げ15万部と発表されており、このご時世に素晴らしい数字です。ノンフィクションの場合、10万部以上売れれば、拍手モノと言われています。

『女帝 小池百合子』では小池都知事の生まれ育った兵庫県芦屋市へ著者の石井氏が訪れ、小池都知事の生来の性格は生い立ちに根差しているのではないかと推測しています。

冒頭では小池都知事の旧友が「彼女は白昼夢を生きている」と評しています。すなわち、彼女は「自分が創った経歴」をそのまま信じている、と言う事です。

カイロ学卒業(首席とも言われている)。そして政治家になってからの数々の失言と裏切り行為。水俣病患者、拉致被害者、阪神淡路大震災などでの心無い言動をこの本では明らかにしています。

SNSでもこの本は拡散され、そして絶賛されていますし、会見でもジャーナリスト畠山理仁氏が小池都知事にカイロ大学卒業の有無を質問しましたが、「卒業証書は過去に公にしている」「カイロ大学側が認めている」といった主旨で流しました。

小池都知事はこのあたりの批判をさほど脅威と感じていないようです。

何と言っても4年前。東京都知事選での熱狂した国民は未だに健在です。街宣先では小池都知事のキャラ色とされた緑のモノ(きゅうりなど)を持った主婦層が、「ゆりこちゃーん」と叫び手を振っていました。SNSを見ていない女性たち(もちろん男性も)は恐らく『女帝 小池百合子』は未読でしょう。

今回、無所属で出馬を発表しましたが、自民党の二階幹事長のパイプも確立したようですし、創価学会の婦人部からの人気も厚く自公の支持を得たと言ってよいでしょう。

自民党都議連は前回、落とされまくった苦い思いがありますが、そこもクリアしたようです。自民党が一番恐れているのが「二度と下野したくない」です。近年では民主党政権時代。そして小池都知事の『希望の党』ブームがありました。

熱狂と言うのは恐ろしいものです。ポピュリズムの闇と言ってよいでしょう。小泉純一郎元首相のブームを支えたのも主婦層でした。「純一郎さーん」「純ちゃーん」と叫びながら手を振っていた女性たち。挙句の果てには、小泉元首相は写真集まで出す始末。

そう言えば小池都知事も写真集を出しています。

きたる選挙では「熱狂」を起こすほどの候補者は今のところいません。小池都知事の圧勝となるのでしょうか。因みに、小池都知事が前回公約に挙げた「満員電車ゼロ」などの公約で、実効に到ったものはいくつあるのか、高い都民税・区民税を払っている都民は、考えなければならないでしょう。(文◎編集部)

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