7年連続Bクラスの中日、浮上の鍵はDeNA戦? 交流戦なき120試合で頂点を狙う術

中日・与田剛監督【写真:荒川祐史】

120試合の今シーズンのVラインは貯金20

ついに球春到来。ただ、今シーズンは異例だ。交流戦が中止され、試合数は143から120に減少。1軍登録枠は29人から31人、ベンチ入りも25人から26人に増えた。基本的に6連戦が続き、ペナントレースは11月まで続く。

当然、毎年チームは変わる。ドラフト、FA、トレード、外国人など選手の入れ替わりもあれば、監督交代など首脳陣の刷新もある。さらに新型コロナウイルスへの感染も懸念される今年は不確定要素が多く、波乱の1年になる可能性が大きい。

7年連続Bクラスに沈む中日。かつての常勝軍団が復活するための鍵は何か。あえて過去の戦いを整理し、捲土重来のポイントを探る。交流戦が18試合制となったのは2015年。去年までの過去5年間で交流戦の成績を除外し、セ・リーグ同士の戦いのみ125試合で勝率を計算すると、順位に変動はあるのだろうか。

去年は1位巨人、2位広島(実際は4位)、3位阪神、4位DeNA(実際は2位)、5位中日、6位ヤクルトとなり、Aクラスの顔ぶれが変わる。一方、2018年は全く変化なし。2017年は1位広島、2位阪神、3位巨人(実際は4位)、4位DeNA(実際は3位)、5位中日、6位ヤクルト。2016年は1位広島、2位DeNA(実際は3位)、3位巨人(実際は2位)、4位ヤクルト(実際は5位)、5位阪神(実際は4位)、6位中日。2015年は1位巨人(実際は2位)、2位ヤクルト(実際は1位)、3位広島(実際は4位)、4位阪神(実際は3位)、5位DeNA(実際は6位)、6位中日(実際は5位)となり、全球団の順位が変動した。たかが18試合、されど18試合である。

また、交流戦なしの125試合で優勝したチームの平均勝率は5割9分。120試合に換算すると、71勝49敗。貯金20がVラインとなり、かなりハードルは高い。

残念ながら、中日は交流戦を除いても5年連続Bクラス。これは6球団で中日だけ。つまり、中日はセ・リーグにやられている。過去5年間の対戦成績は以下の通りだ。DeNA戦49勝72敗4分。巨人戦53勝68敗4分。広島戦54勝67敗4分。阪神戦57勝67敗1分。ヤクルト戦59勝64敗2分。最も苦手な球団はDeNAと判明。平均勝率は4割5厘で、唯一5年連続で負け越している。セ・リーグ同士の戦いに分の悪い中日が一気に貯金を20個作り、頂点に立つにはDeNAを倒さなければならない。

昨年はDeNAに14敗も、7敗が1点差の僅差の勝負に

ところで、DeNAにはそんなに力負けしているのか。去年、DeNA戦は14敗しているが、7敗が1点差。総得点は105点で1試合平均4.2点。総失点は111点で1試合平均4.4点。2018年も15敗中10敗が2点差以内。実にわずかな差で競り負けているのだ。

ただ、主力野手陣はDeNA戦で打っている。去年の打率は京田陽太が.370、福田永将が.362、平田良介が.346、高橋周平が.315、ソイロ・アルモンテが.300、ダヤン・ビシエドも.295、5本塁打と相性は悪くない。

どうやらポイントはあと1点を「取る」よりも「防ぐ」ことのようだ。開幕ローテーション候補の中日先発陣のDeNA戦の成績はどうか。競り負けてきた過去2年間を見ると、大野雄大は4試合2勝1敗3.41。柳裕也は4試合1勝2敗3.33。小笠原慎之介は4試合1勝1敗4.01。吉見一起は4試合0勝3敗5.73。山本拓実は2試合1勝0敗0.00。梅津晃大は登板なし。リリーフ陣はどうか。藤嶋健人は12試合6.17。岡田俊哉は12試合5.79。又吉克樹は12試合4.34。鈴木博志は14試合3.38。ライデル・マルティネスは7試合2.70。福敬登は10試合0.77。祖父江大輔は14試合0.63。

もちろん、実績のある投手、相性の良い投手の踏ん張りは不可欠だ。しかし、「過去は過去。今年は違う」と証明するにはこれまでDeNAとの対戦が少ない投手や新戦力の台頭が鍵を握るのではないか。山本、梅津に加え、橋本侑樹(ドラフト2位・大商大)、岡野祐一郎(ドラフト3位・東芝)、ルイス・ゴンサレス(オリオールズ3A)に期待が集まる。

与田監督は開幕当初は早めにリリーフをつぎ込む計算

一方、過密日程の120試合をどう乗り切るか。CBCテレビ中日応援番組「サンデードラゴンズ」に出演した与田剛監督は1軍登録枠について「最初は(例年に比べ)投手は多めになる。開幕してすぐは先発もそんなに長いイニングを投げられないと思う」と発言。先発の怪我を防ぐためにも早めにリリーフをつぎ込む計算だ。

谷繁元信氏は同番組で「今年の鍵は中継ぎ陣。6連戦が続くので、勝ちパターンも2パターンくらい作り、なるべく3連投を避ける工夫が必要」と提言。岩瀬仁紀氏も中継ぎ陣について「シーズンが進めば、7人か8人で回すと思うが、開幕当初は9人登録しても構わない」と話した。

怪我については韓国サムスンライオンズ落合英二2軍監督の指摘が興味深い。「開幕直後、各チームとも野手は下半身、投手はわき腹の肉離れが相次ぎました。コンディションが万全ではない中、気持ちは高まる。すると、怪我のリスクは増します。サムスンも2軍から野手が次々に1軍へ呼ばれて、控え野手がたったの1人という試合もありました」と振り返る。

与田監督は「まずは怪我をさせないこと。特にナイター後のデーゲームは疲労が蓄積しやすい。うまくやりくりしながら、戦いたい」と週末の試合を中心にメンバー固定にこだわらない姿勢を見せた。2軍を含め、レギュラー以外の選手も重要だ。

9年ぶりの優勝へ。宿敵DeNAを撃破し、怪我を防ぐ。それには若手や新戦力の活躍、控え選手の底上げ、首脳陣の臨機応変な采配が必要だ。秋には胸を張りたい。「過去は過去。今年の中日は違った」と。(CBCアナウンサー 若狭敬一/ Keiichi Wakasa)
<プロフィール>
1975年9月1日岡山県倉敷市生まれ。1998年3月、名古屋
大学経済学部卒業。同年4月、中部日本放送株式会社(現・株式会
社CBCテレビ)にアナウンサーとして入社。
<現在の担当番組>
テレビ「サンデードラゴンズ」毎週日曜12時54分~
「High FIVE!!」毎週土曜17時~
ラジオ「若狭敬一のスポ音」毎週土曜12時20分~
「ドラ魂キング」毎週金曜16時~

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