F1開幕前に移籍を決めたリカルド「1戦も走らず判断するのは、本当に難しかった」

 ダニエル・リカルドは、2020年F1シーズンが開幕する前に、今季末でルノーを離れ、マクラーレンに移籍するという決断を下した。パンデミックの異常事態により、シーズン開始が延期されるなかで検討し、判断しなければならず、非常に悩ましかったと、リカルドは言う。

 リカルドはルノーF1ワークスチームに2019年初めに移籍、2年間の契約が切れる2020年末で同チームを離れることを、先月発表した。フェラーリを離脱するセバスチャン・ベッテルの後任にカルロス・サインツJr.が起用され、リカルドはサインツのマクラーレンのシートを引き継ぐことになった。

 リカルドは、簡単な決断ではなかったと述べている。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、世界的な混乱が引き起こされるなか、ルノーの2020年型マシンR.S.20に乗る機会がほとんどなく、今後のシーズンがどのように展開するのかが分からないまま、判断することになったからだ。

「今年はまだテストしかしていないのに、その状態で決定を下すのは、簡単ではなかった」とリカルドはF1のインスタグラムのライブQ&Aセッションで語った。

「シーズンの活動を始め、レースをしてから、決意するのが理想的だ。でも、そんな贅沢が許される時期ではない」
「今や、コロナウイルスが関係しない部分も含めて今季全体がクレイジーなものになっている」

「将来について考える時間を持てたのは良いことだったけれど、簡単ではなかった。なぜなら、時間はあっても、活動はほとんどしていないからだ。本当に難しかった」

 その難しい状況のなかで、リカルドはルノーを去ってマクラーレンに加入するという選択をした。
「決断するのは容易ではなかった。ひと晩で決めたことではない」
「今年はおかしな年だ。奇妙な状況がこれからも続くのだろう」

2020年F1プレシーズンテストでのダニエル・リカルド(ルノー)

 パンデミックの影響で、3月にメルボルンで行われる予定だったリカルドの母国レース、オーストラリアGPは開催直前で中止が決まった。シーズン前半10戦を中止か延期とした後、F1は各国の状況を考慮し、さまざまな予防策を検討しながら、カレンダーの組み直しに取り組み、ついにシーズン序盤の日程を発表した。

 7月前半の週末にオーストリアのシュピールベルクに位置するレッドブル・リンクで2戦が開催され、その後はハンガリー、イギリス(2戦)、スペイン、ベルギー、イタリアと、ヨーロッパでは10週間の間に8戦の開催が予定されている。

「正式な開幕日が発表された時には、誰もが心から安堵したことだろう。『トンネルの終わりが見えた。先に進むことができる』という感じだね」とリカルドは言う。

 今季末でチームを去ることを知りながら開幕戦に挑むことになるリカルドは、ルノーとともに走る最後のシーズンでベストを尽くしたいと語った。

「ルノーとの旅路と章の終わりを、できる限り最高の形で終えたい。チームの皆にはコース内外で世話になった。もうすぐ戦いに出て、力を発揮できることをうれしく思っている」

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