トレード移籍組は勝負の時! ロッテ石崎、オリW松井ら昨季パに移籍した選手の現在地

ロッテ・石崎剛、オリックス・松井雅人、松井佑介(左から)【写真:荒川祐史】

強打の捕手として期待がかかる宇佐見、元MVP左腕の吉川は輝くを取り戻すことができるか?

昨シーズン、パ・リーグ、セ・リーグ間では7件のトレードが成立し、9選手が新たにパ・リーグの一員となった。セ・リーグ在籍時の活躍など、移籍選手のことをまだ詳しく知らない方も多いだろう。そこで、この9選手の移籍前後の活躍を振り返るとともに、2020シーズンの彼らの注目ポイントを見ていこう。

宇佐見真吾捕手、吉川光夫投手は昨年6月に鍵谷陽平投手・藤岡貴裕投手と交換トレードで巨人から日本ハムに移籍。

宇佐見は、2015年ドラフト4位で巨人に入団。プロ初ホームランがサヨナラホームランになるなど、攻撃型捕手として期待されるも、捕手層の厚い巨人ではなかなか出場機会を得ることができなかった。移籍後、即1軍に登録されるが、ちょうどその日から「北海道シリーズ2019 HOKKAIDO be AMBITIOUS」が開催され、選手は赤色の企画ユニフォーム着用だったため、ユニフォーム作成が間に合わず、實松一成氏(現・巨人2軍バッテリーコーチ)のユニフォームを借りてファイターズデビューを飾った。移籍後は、シーズン途中の移籍になったにもかかわらず、自己最多の45試合に出場、規定打席には満たなかったが、得点圏打率.333と要所で勝負強さを発揮した。開幕マスクを目指す今シーズン、6月の練習試合で古巣巨人のエース・菅野智之投手から本塁打を放つなど、アピールが光った。

吉川は、2006年の高校生ドラフト1位で日本ハムに入団。2016年に一度、日本ハムから巨人に交換トレードで移籍しており、今回のトレードで3年ぶりに日本ハムに“復帰”する形となった。巨人では、2年連続で開幕ローテーション入りを果たし、2018年においては6勝7敗とまずまずの成績を残す。そして2019シーズンから中継ぎに転向するも、9試合で0勝1敗、防御率9.95と低迷。日本ハム復帰後も、4試合で0勝3敗、防御率6.75と本領発揮することができなかった。かつてパ・リーグMVPやベストナインといったタイトルを受賞するなど、経験豊富な投手であるため、2020年の再起が期待される。

勝負強さが光る下水流、将来の主軸候補として期待された和田

熊原健人投手は濱矢廣大投手と交換トレードで昨年3月に楽天に移籍。2015年のドラフト2位で入団、DeNA時代は、ダイナミックなフォームが注目され、実家が神社ということで「神主投法」呼ばれ、親しまれた。しかし、3年間で22試合に登板し4勝2敗、防御率5.14と目立った成績を残すことができず。自らの出身地でもある東北の地で、プロ野球人生の再スタートを切った。則本昂大投手の離脱などもあり、先発としての活躍を期待されるも、血行障害を発症し、1軍登板わずか1試合、4回途中3四球2失点と、制球力に課題を残した。オフには右手血行障害に対する中指・環指血管剥離手術を受けたが、3月の練習試合で復帰登板を果たしている。

昨年7月に三好匠内野手との交換トレードで広島から楽天に移籍した下水流昂外野手は、2012年、ドラフト4位で広島に入団。広島時代から、勝負強さを自身の強味としており、しびれる場面での代打出場が多かった。また、広島市下水道局とタイアップし、「広島の外野は下水流が守る。広島の浸水は下水道が守る」というポスターに登場するなど、非常に愛された選手だ。しかし、際立ったコンスタントな活躍を見せることができず、右打者そして代打で結果を残せる打者を求めていた楽天に移籍。もちろんスタメンでの出場もあったが、代打で19打数6安打、打率.315の好成績を残し、持ち味である勝負強さを十分に発揮した。さらに、出塁率も3割を超えており、期待に応える良い働きをしたと言える。2020シーズンも、スーパーサブとしてチームを支えてくれるだろう。

和田恋外野手は昨年7月、古川侑利投手と交換トレードで巨人から楽天に移籍。2013年、ドラフト2位で巨人に入団。180センチ、81キロ(入団当時)の恵まれた体格を持ち、将来の主軸として期待され、2018年にはイースタンリーグで本塁打と打点の2冠王に輝く。しかし、なかなかチャンスをつかむことができず、巨人時代の1軍出場はわずか5試合。トレード発表後は「巨人にいて、戦力になれなかった悔しさがある」とコメントを残しながらも、「心機一転、1軍で活躍することで巨人に恩返しできたらと思う」と意欲を示した。そして、2019年8月11日のオリックス戦、右中間にプロ初ホームランを放ち、自己最多の31試合に出場。打率.252、2本塁打11打点で2019シーズンを終え、確かに成長を示している。競争激化が予想されるレギュラー争いでどれだけアピールできるか期待したい。

中日からオリックスに移籍したW松井とモヤ

石崎剛投手は昨年7月、高野圭佑投手との交換トレードで阪神からロッテに移籍。2014年、ドラフト2位で阪神に入団。サイドスローの中継ぎとして、速球で打者をねじ伏せる投球スタイルが特徴だ。2017年は26試合に登板し、防御率1.17で侍ジャパン選出の経験もあるが、2018年に受けた右肘手術の影響もあって戦線から離れた時期もあった。しかし2019シーズン、ウエスタン・リーグでは18試合に登板し、防御率1.10と好成績を残し、ロッテに移籍。しかし移籍後、1軍で2試合登板するも、両試合ともに失点。イースタン・リーグでも21試合に登板するも、防御率が5点台と振るわなかった。2020シーズンは、持ち味であるストレートにさらなる磨きをかけ、6月の練習試合でも好リリーフ。勝利の方程式入りが期待される。

松井雅人捕手と松井佑介外野手は昨年7月、松葉貴大投手・武田健吾外野手と交換トレードで中日からオリックスに移籍。

松井雅は2009年、ドラフト7位で中日に入団。2018年にはチーム最多の92試合でマスクを被るなど経験豊富な選手だ。2019年6月、伏見寅威選手が左アキレス腱を断裂し、即戦力の捕手が必要とされ、実戦経験が豊富な松井雅が加入した。そんな、松井雅はオリックスと不思議な縁がある。2017年6月9日、オリックス対中日の一戦、マレーロが放った大飛球は記念すべきNPB通算10万号になる“はず”だった。しかし、本塁を踏み忘れる痛恨のミス。これを見逃さなかった捕手こそ、松井雅だったのだ。移籍後には、オリックスの公式インスタグラムにおいて、松井雅とマレーロが肩を組み、一緒にホームベースを持つ仲睦まじい写真が公開され、話題となった。今月の練習試合では強肩のアピールはもちろん、打撃では本塁打のみならず、絶妙なバントヒットまで成功させている。

松井佑は、2009年、ドラフト4位で中日に入団。快足と強肩に期待され、1軍出場のチャンスは数多くあったものの、度重なる故障や不振などでなかなか1軍に定着できず。しかし2017年、代打で結果を残すと、そこからスタメンでの出場機会が増加。56試合4本塁打、18打点でキャリアハイをマークするが、2018年はわずか17試合3安打にとどまり、2軍暮らしが長く続いた。そして、2019年7月にオリックスに移籍。移籍後は7試合で1本塁打を含む6安打の好成績を残したが、右もも裏を痛めて登録抹消。シーズン中、1軍に復帰することはできなかった。プロ11年目となる2020シーズン、開幕直前の練習試合では途中出場でタイムリーを放った。右の代打で開幕1軍なるだろうか。

モヤは金銭トレードで、松井雅・松井佑と同タイミングで中日からオリックスに移籍。201センチの長身で、鋭い打球を飛ばすパワーヒッターだ。なぜ中日はモヤのような大砲を放出したのだろう、と疑問に思ったファンも多いだろう。NPBのルールで、外国人選手の1軍登録は4人までとされているため、中日ではモヤを常時1軍に置くことが難しかった。移籍後は、64試合に出場、打率.244、10本塁打35打点をマークし、チームに大きく貢献。今季はジョーンズ、ロドリゲスといった個性的な外国人選手たちとしのぎを削る。

ここまで紹介した9選手が、楽天・藤田一也内野手や日本ハム・大田泰示外野手などのように、トレードを機に花を咲かせ、レギュラー定着、そしてチームの中心選手になることに期待しよう。(「パ・リーグ インサイト」後藤万結子)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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