国交省、5方式対応のアセス提案 佐賀県は拒否 新幹線長崎ルート

 九州新幹線長崎ルートの未着工区間(新鳥栖-武雄温泉)を巡り、国土交通省は17日までに、佐賀県に対し、整備方式の議論と同時並行して五つある整備案すべてに対応する環境影響評価(アセスメント)の実施を提案した。いずれの結論が出た場合も速やかな着工につなげる狙いがあったが、県側は同日の定例県議会で「同意できない」と拒否したことを明らかにした。
 国交省と佐賀県は今月5日、▽フル規格▽ミニ新幹線▽スーパー特急▽フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)▽対面乗り換え(リレー)-の五つを想定し「幅広い協議」に入った。環境アセスは通常、整備方式が決まってから手続きが始まるが、国交省によると完了まではフル規格の場合で2年強から3年弱かかる見込み。
 国交省は「複数年を要する環境アセスの手続き実施期間にわたり、腰を据えて協議ができる」として、今夏からの実施を求めた。提案は16日。予算は本年度確保している整備新幹線関連予算から拠出する考えという。
 これに対し、佐賀県で新幹線問題を担当する南里隆地域交流部長は議会答弁で、過去に認可されたスーパー特急や対面乗り換えの環境アセスの必要性に疑問を示し、FGTも「(与党検討委に報告した資料で)国交省自身が不要としている」と言及。その上で「実質はフル規格とミニ新幹線のための環境アセスではないか。議論の混乱を招くような提案は大変遺憾だ」と述べ、16日のうちに拒否したことを明らかにした。
 山口祥義佐賀県知事は記者団に「話にならないというのが(県の)共通した意見だ。(国交省は結論を)急いでいるのかなと思う」と語った。
 一方、国交省側は、フル規格とミニ新幹線以外は法令的な環境アセスは厳密には必要ないが、幅広い意味で影響を調べる「自主的なアセス」を実施する準備があると指摘。不同意の回答を正式に受けたとの認識には立っておらず「佐賀県から5択でのフラットな議論を求められているので知恵を絞り、受け入れやすい形を提案した」としている。
 長崎県新幹線対策課は「現時点は国交省と佐賀県の協議の動向を見守る段階」と述べるにとどめた。

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