<社説>河井前法相夫妻逮捕 買収原資の解明不可欠だ

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 検察当局は公職選挙法違反の疑いで、前法相で衆院議員の河井克行容疑者と、妻で参院議員の河井案里容疑者を逮捕した。現職の国会議員2人が同時に逮捕される異例の事件だ。しかも法秩序の維持を任務とする法務大臣経験者に買収の嫌疑がかかっている。安倍晋三首相の任命責任は重大だ。 解明が必要なのは2人の共謀関係だけではない。大規模な買収疑惑が浮上している昨年7月の参院選で、自民党本部は夫妻側に1億5千万円もの資金を提供している。この資金が買収に用いられたと考えるのが普通だ。

 政党の提供資金が買収の原資であれば、自民党の責任は限りなく重い。大金を投入した党の意図と関与の実態を解明する必要がある。検察は政権に忖度(そんたく)してはならない。党本部への家宅捜索を含め、ちゅうちょなく必要な捜査を進めることだ。

 両容疑者は案里容疑者が初当選した昨年7月の参院選で、票の取りまとめを依頼して地元の広島県議らに現金を配った疑いが持たれている。案里氏を当選させるため、夫妻が共謀し5人に計170万円、克行容疑者が91人に対し計約2400万円を渡した容疑だ。買収容疑は総額約2570万円に達する。

 案里氏の選挙を巡ってはこれまでに、車上運動員に法定上限を超える違法な報酬を支払った疑いが浮上し、案里氏の秘書ら3人が逮捕されている。16日には公設秘書の裁判で執行猶予付きの有罪判決を言い渡された。

 運動員への上限を超える報酬や地元議員へのばらまきからは、金に物を言わせて票をかき集めるしゃかりきな選挙活動が浮かび上がる。

 大掛かりな買収疑惑の背景には、自民党の候補者同士による参院選のし烈な議席争いがあった。

 自民党は参院選広島選挙区で2議席独占を狙い、県議だった案里容疑者を擁立した。当時現職の溝手顕正氏を支援する党広島県連は反対したが、党本部が押し切った。

 夫の克行容疑者は安倍首相や菅義偉官房長官と近く、案里容疑者の応援演説に首相や官房長官が駆け付けている。さらに、溝手氏側への党本部からの入金は1500万円で、案里容疑者への支援と10倍の開きがあったことも明らかになっている。

 案里容疑者の選挙を仕切った克行容疑者は、溝手氏の地盤を切り崩すため地元議員の買収を進めた疑いがある。河井夫妻と深く関わってきた安倍首相や菅官房長官は、選挙戦への肩入れについて国民への説明が必要だ。

 新人の案里容疑者の擁立をごり押しした経緯といい、首相の「お友達」を重用する縁故主義が際立っている。

 安倍首相は不祥事のたびに責任は私にあると言いながら、実際には責任を取ったためしがない。今度こそ本当に責任を取るべきだ。