先発“定員オーバー”の鷹、古巣命運はルーキー次第? 燕伝説左腕の今季展望

ヤクルト・奥川恭伸【写真:荒川祐史】

パ・リーグのイチオシはオリックスのプロ3年目左腕、起用法がカギに

セ・パ両リーグは当初の予定より約3か月遅れて19日に開幕、例年より23試合減の120試合で争われる。異例のシーズン展開を、元ヤクルト投手でコーチ、スコアラーも務めた野球評論家・安田猛氏が大予想。さらに、思い入れたっぷりの“イチオシ選手”を挙げてもらった。

ソフトバンクの先発投手陣の充実ぶりは群を抜いています。右前腕部を痛めていた千賀が多少出遅れても、東浜、和田、バンデンハーク、メジャー通算54勝の新助っ人ムーア、高橋礼、二保、松本ら、先発ローテを担える投手は“定員”の6人を優に超える。この層の厚さが過密日程となる今季、圧倒的有利に働くでしょう。

一方、レギュラーシーズン2連覇中の西武。打線は相変わらず強力ですが、先発投手陣のコマが足りない。来日1年目の昨季12勝1敗と大活躍したニールも、相手に研究される今季は同じような成績を求めるのは酷でしょう。練習試合で自己最速の155キロを計測した今井、アンダースローの與座ら、のびしろのある若手はいますが、彼らがよほど結果を残さないと苦しいと思います。

オリックスに私のイチオシ選手がいます。私がJR東日本の外部コーチ時代に指導したプロ3年目左腕、田嶋大樹投手です。打者から見ると手元で加速するような、見たこともないような球質のすごいストレートを投げます。彼が佐野日大高からJRに入ってきた時、私は思わず「君はなぜ、ここにいるんだ?」と問いかけました。高校から直接プロに行ってもおかしくない、いや、プロに行っていなければおかしい球を投げていたからです。

ただ、当時からケガが多く、特に肘を痛めることが多くて、成長させることができなかった後悔があります。ドラフト1位でオリックス入り後も故障がちなところは変わらず、1年目は6勝、2年目の昨季は3勝でしたが、断じてそんな勝ち星にとどまるような投手ではありません。彼の場合は、中10日とか、5イニング限定とか、負担を軽くして先発させたらどうかと思います。そうすれば安定して勝ち星を稼ぐでしょうし、山岡、山本も擁するオリックスの上位進出の可能性が高まると思うのですが。

古巣・ヤクルトは投手力に不安が残る一方、期待の黄金ルーキーが起爆剤に?

一方、セ・リーグに関しては巨人の戦力のバランスが非常にいい。古巣のヤクルトを推したいのはやまやまですが、いかんせん投手力が弱すぎます。

ただ、ヤクルトには飛躍の要素が秘められてます。ドラフト1位ルーキーの奥川恭伸投手(星稜高)です。まだ19歳で今月12日にプロ入り後初のシート打撃登板を果たしたばかりですが、最速153キロを計測し、浮き上がるような球筋の素晴らしい投手です。無理は禁物ですが、それでも今季中に1軍デビューする可能性は極めて高いと思います。20歳で4番を務めるという村上とともに、ヤクルトの5年ぶりのリーグ優勝への起爆剤となることを祈っています。

◇安田猛(やすだ・たけし)

1947年4月25日、福岡県出身。小倉高3年春に、エースとして選抜大会出場。早大、大昭和製紙を経て、71年ドラフト6位でヤクルト入り。72年に7勝5敗、防御率2.08で新人王と最優秀防御率のタイトルを獲得。翌年も2.02で最優秀防御率に輝いた。現役10年間で通算93勝80敗17セーブ。いしいひさいちの人気漫画「がんばれ!!タブチくん!!」の準主役「ヤスダ」のモデル。引退後はヤクルトで投手コーチ、スカウト、編成部長を歴任。2016年までJR東日本の外部コーチを務めていた。左投左打。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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