新型コロナウイルスで「秋の風物詩」も中止に

35回も開催、国民に定着したF1日本GP

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昨年のF1日本GPの様子。開催中に行われた恒例の「ピットウオーク」には多くのファンが押し寄せた(C)モビリティランド

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休止していた国内スポーツが動き始めている。6月19日にはプロ野球が開幕。Jリーグも27日にJ2とJ3の試合が開催される。J1も7月4日に再開する予定だ。新型コロナウイルスが社会に与える影響は依然として大きく、感染再拡大の不安も消えない。それでも、「日常」は確かに戻りつつある。

 一方、モータースポーツの世界では非常に残念なニュースが発表された。6月12日に鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)の運営会社であるモビリティランドが「2020 FIA F1世界選手権シリーズ ピレリ日本グランプリレース」、つまりF1日本GPの中止を発表したのだ。

 開催回数が35を数え、秋の風物詩といえるほど定着してきた日本GP。今年はそれを楽しむことができないのだ。何とも寂しい。

 同社の田中薫社長はコメントを出して、「国内外における今後の状況変化や、渡航規制の解除が見通せない状況のなか、安心・安全な環境で開催するための準備期間も考慮し、やむなく中止の判断をいたしました」と中止理由を説明した。

 日本GPの中止決定に合わせて、アゼルバイジャンGPとシンガポールGPの中止も国際自動車連盟(FIA)から正式に発表された。

 現在、日本は111の国と地域を対象に外国人の入国を拒否している。6月18日に安倍晋三首相は「タイやベトナム、オーストラリア、ニュージーランドと例外的に人の往来を可能とする協議、調整を進める」と述べ、出入国の制限を緩和することを表明した。

 F1は数多くの国の人がやってくるイベントだ。開催を予定していた10月までには状況は変わっているだろう。それでも、全員が入国できる保証はない。無観客で開くこともあり得るのだろうが、入場料収入はゼロになる。そうなると、巨額の開催費用などを誰が負担するのかという問題が発生する。

 ここで、F1日本GPの歴史について紹介したい。初めて開催されたのは1976年の富士スピードウェイ(静岡県小山町)だった。翌77年も富士スピードウェイで行われた後、10年間の沈黙を経て復活する。

 87年に鈴鹿サーキットで行われることになったのだ。鈴鹿サーキットは、80年代半ばから90年代初めに掛けて最強エンジンの名をほしいままにしたホンダのホームコース。日本人初のフル参戦ドライバーとなった中嶋悟の存在も相まって、一大ブームとなった。

 現在、さまざまなものに『○1グランプリ』という名称がつくのは、F1ブームによる影響であることは広く知られている。それから33年間、F1日本GPは継続されてきたのだが、今回の新型コロナウイルスの影響で連続開催が止まることになってしまったのだ。仕方ないことと理解はしていても、本当に残念でならない。日本GP関係者は断腸の思いだろう。

 モータースポーツに限らずスポーツの国際試合が元の姿に戻るには、まだまだ時間がかかるだろう。そんな中でも日常を取り戻すための努力は必要だ。日本のモータースポーツ界は、国内レースの開催を決めた。

 スーパーGTは、7月18、19日に富士スピードウェイで開幕戦を実施。その後は、鈴鹿サーキットとツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)を使用して、11月29日決勝の最終戦まで計8戦を実施する。

 スーパーフォーミュラも8月29、30日にツインリンクもてぎで第一戦を行い、最終第7戦を12月19、20日に富士スピードウェイで実施する。両カテゴリーとも当初は無観客レースだが、状況次第で観客を入れたレースへと変更していく予定だ。

 スポーツや芸術は、人々の暮らし向きに直結する経済対策より後回しにされてしまいがちだ。それでも、関係者がファンとともに前へ進むことが重要なことは言うまでもない。日本国内のレースがしっかり開催されることで、国際レースの再開に向けた基盤を作ってもらいたい。(モータースポーツジャーナリスト・田口浩次)