拉致問題風化させぬ 海上保安資料館4カ月ぶり再開 横浜

工作船の後部甲板上に格納されていた対空機関銃を示す3管の髙木総務部長=海上保安資料館横浜館

 北朝鮮工作船が展示されている海上保安資料館横浜館(横浜市中区)が19日、約4カ月ぶりに再開した。日本人拉致問題もパネルで紹介しており、施設を運営する第3管区海上保安本部は「北朝鮮による事件、事案を風化させない」と強調。新型コロナウイルスの感染予防策を徹底し、多くの来館を呼び掛けている。

 資料館は、鹿児島県・奄美大島沖の九州南西海域で2001年12月に発生した北朝鮮工作船事件に絡む船体や備品類を中心に展示。中国の漁船に偽装した工作船は洋上を逃走中に海保の巡視船に攻撃を加え、激しい銃撃戦の末に自爆、後に海底から引き揚げられた。船内からは武器をはじめ、スウェーデン製のエンジンを3基搭載した小型舟艇や日本製のゴムボート、無線機などが見つかった。

 工作船は北朝鮮の工作員を海外に運び回収する母船で、小型舟艇やゴムボートは上陸用とみられる。沈没した工作船は捜査の結果、九州周辺海域で覚醒剤の運搬などに使用されていたことが濃厚とされた。この工作船が日本人拉致事件に関与したかは定かではないが、展示品からは北朝鮮の工作員が海を渡り日本国内で盛んに不法活動を続けていたことがうかがえる。

 館内では横田めぐみさん=失踪当時(13)=ら拉致被害者の家族の思いをはじめ、拉致問題解決に向けた政府の取り組みをパネルや映像で発信。拉致被害者家族会の初代代表を務め、5日に87歳で亡くなっためぐみさんの父、滋さん(川崎市)が救出運動の先頭に立ち早期解決を訴え続けた姿も写し出されている。

 同館館長の髙木正人3管総務部長は「四方を海に囲まれた日本の領海警備の現状や重要性を伝えることで、海上保安庁が担う役割を知ってほしい」と話している。

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